リボーンの中心会場である石巻市は、二つの宣言を行っている。それは、私が初めて降り立ったJR石巻駅前の小さな広場にひっそりと佇む記念碑や塔によって知られる。 それらに刻まれた文章の一つは、非核平和都市宣言(1)、もう一つは、萬画宣言(2、3)である。その漫画文化を伝承する施設が、旧北上川の中州の中瀬公園に建つ石ノ森萬画...Read More
日和山から見下ろす景色に、3.11の残酷な出来事がオーバーラップして、今日の穏やかな日が信じられない気がした。しかし、あの日の痕跡は残っている(残されている)。そのとき当事者(大惨事を経験した者)と非当事者(経験していない者)の絶対的な差違は埋められないと実感した。加害者と被害者の溝が埋まらないのとまったく同じように...Read More
2017年、2019年と開催されたアートと音楽と食の祭典、ビエンナーレ形式のリボーンアート・フェスティバル(1、以下リボーンと略記)は、3回目の今年、新型コロナウィルスのパンデミックの影響で、2021年と2022年の二回に分けて行われることになった。以下の文章は、その2021年夏期のレビューである。 本展のキュレータ...Read More
【The Evangelist of Contemporary Art】東京ビエンナーレは、果たして東京ビエンナーレだったのか?(2)からの続きです。 今東京ビエンナーレの目玉のひとつにAR作品がある。ARとは、「Augmented Reality」の略で、それを訳せば「拡張現実」であり、文字通り現実が拡張されるデジタ...Read More
壁景の意味 不思議な作品を見た。抽象のようだが、版画のようでもある。そして、筆などで描写したようには見えなかった。どうやってつくっているのか。これは写真なのか、ペインティングなのか。 そのタイトルが気になった。「壁景」。なるほど、これは壁を描いたか、写したものだろう。だが、普通の壁には見えない。何か特殊な壁を撮影して、...Read More
【The Evangelist of Contemporary Art】東京ビエンナーレは、果たして東京ビエンナーレだったのか?(1)からの続きです。 さて、これからエリアごとに、具体的に展示作品の幾つかを取り上げ、コメントを加えていきたい。 東京ビエンナーレ巡りは、まずビエンナーレの本拠地からということで、3331ア...Read More
新型コロナウィルス感染爆発は勿論のこと、今夏は酷暑や大雨の気象異変で、開催期間中、野外鑑賞に適した日は少なかった。また、新型コロナ禍が長期に渡り、ビエンナーレ自体も延期されたり、来日できなかったり作品を出展できなかった海外の参加アーティストが多かった。したがって今ビエンナーレは、目指された本来の姿から遠くかけ離れたも...Read More
京都の舞踏とコンテンポラリーダンス 京都は舞踏のメッカである。というと、驚かれるかもしれない。 舞踏は、1959(昭和34)年、土方巽が大野慶人と『禁色』を上演したことで始まったとされる。そして、土方巽と大野一雄が舞踏を生み出した。 その土方の元から、1972年に生まれたのが大駱駝艦で、麿赤兒が主宰し、現在も活動を続け...Read More
今まで、数回にわたり、世界各地の音楽とバンドを紹介してきましたが、まだ日本のバンドを紹介していません。 今回は、ぜひ皆さんに知って欲しい日本のバンドを紹介します。 EKD & Los Changarasというバンドです。 オルタナティブなバンドですが今年のフジロックにも出ます。 EKDは2007年に東京で活動...Read More
TCAA受賞記念展 風間サチコは、2017年の横浜トリエンナーレで、最も気になった作家だ。2018年、埼玉の原爆の図丸木美術館でも個展があった。そして、「Tokyo Contemporary Art Award(TCAA)2019-2021」で受賞した。この賞は、東京都と公益財団法人東京都歴史文化財団東京都現代美術館ト...Read More
なぜ、残像か? 儚く消え去る幻影ではない。脳裏に記憶の痕跡が刻まれるほど、逸楽の強烈なイメージ。それは連鎖する。強烈な残像は別のそれと共鳴し響きあい、人間の活動は、この残像の連鎖が織りなす環境の影響を蒙る。 その意味で世界の土台となるこの残像が、本文で取り上げるアーティストの作品からどのように練り上げられるのか。そし...Read More
横浜開港アンデパンダン展 現在、関東では、前回解説した1947年から続く日本アンデパンダン展のほかに、もう一つ、アンデパンダン展がある。2009年に始まった横浜開港アンデパンダン展で、2021年、9回目を迎えた。どちらも無審査のため玉石混淆だが、注目すべきは、パフォーマンスやインスタレーションなどが行われる点だ。 美術...Read More
※ブログ前編はこちら 展覧会から最近・最新の作品も観ておこう。大震災後の復旧と復興は、町や田舎の風景を一変させた。その変貌の様を、前述の小森+瀬尾は「二重のまち」と冠した。 加茂昂は、絵画(49~55)の厚塗りの絵の具の窪みにぽっかり開いた穴のような立看板(56)で、それを見事にネガティヴに浮かび上がらせた。佐竹真紀子...Read More
写真:ソウル 光化門 by 源五郎さん(Photo AC) お隣の国といえば、なぜか中国ではなく、韓国や台湾を思い浮かべてしまうのは僕だけだろうか? その韓国も近くて遠い国の一つであろう。なにせ、マスメディアによって紹介されている政治的な事情を含んだ部分がとても多いからである。また、韓流ドラマやK-POPの影響でそう...Read More
久しぶりに水戸芸術館(1~3)を訪れた。 久しぶりというのは、ここ2、3年当館で行われる企画展に魅力的なタイトルやテーマ、そして興味深い作品がないと思われたからである。東京から2時間の近さとはいえ、それなりの交通費を払って観たいと欲する展覧会でないと、なかなか触手は動かない。実際に鑑賞していないのでそう断言する資格は...Read More
アンデパンダン展と戦後 アンデパンダンというと、読売アンデパンダン展が有名である。読売新聞の海藤日出男が企画して、1949(昭和24)年から1963年に、東京上野の東京都美術館で毎年開催された。現在の東京都美術館になる前のことだ。 それが美術史に残っているのは、1960年にネオダダ・オルガナイザーズを結成する赤瀬川原平...Read More
では、現代の若い画家は、日本に特有の文化的環境に対してどのように振舞っているのだろうか? 本文で取り上げる二つの展覧会のうちのもう一方は、やはり近頃、上野の森美術館で開催されたVOCA展(14)という若手画家(および平面的な作品を制作するアーティスト)の登竜門の展覧会である。そこに出展していた絵画(や平面作品)に注目...Read More
ドラマと映画の違い ドラマをずっと見ていて、映画を見ると、やはり映画のほうがすごいと思うこともある。2時間以内に物語を濃縮し、お金と時間のかけ方も映画のほうが遙かに大きい。 だが、時折、映画以上と思えることもある。例えば、高村薫の『レディジョーカー』(1997年)、横山秀夫の『64(ロクヨン)』(2012年)のような小...Read More
※前編の続き 毎年3月のアートフェアといえば、ニューヨークのArmory Show(8、9、10)と並んでアジア最大のアートバーゼル香港(11、12、13)が開催されてきた。それらを射程に入れていたので、私は3月東京にいることがあまりなかった。アートフェア東京を訪れる機会が少なかったのは、そのためだ。香港のフェアは、去...Read More
上:Huntza concèrt during Hestiv'Òc 2017. バスクは、スペインの北、フランスにまたかがっている、スペインの自治区であり、フランスの地方の1つでもあります。歴史はとても古く、また、とても複雑な流れがあり、現在はスペインとフランスに吸収されましたが、その独自の文化性から、スペインやフラン...Read More
久しぶりにアートフェア東京(1~3)を訪れた。しばらくご無沙汰だった訳はいずれ説明するが、中止の昨年を除けば何年ぶりだろうか? そのため、今年のフェアの印象がかなり異なったとしても不思議ではない。 だが、フェアは新型コロナの影響で一変したといっても過言ではない。その際立った特徴とは、NHKのテレビのニュースで報道され...Read More
その1から続く セキュリティ・ブランケットを根底のテーマに据えて活動する松下誠子は、誰もが生まれながら傷を負っているという自覚から、「病」を人生のなかで捉えようとする。心の質と生命の質が不可分となる感性に訴えかける表現が問い直されることになるだろう。祖母をめぐる記憶と米国日系2世に関連する歴史のリサーチを続ける宮森敬子...Read More
「アートで人の輪を広げて、命の輪を繋いでいく」というギャラリストの発想から始まった工房 親(東京都渋谷区)のLOOPプロジェクトは2011年以降、主に都内の病院・クリニックにアート作品をインストールするという活動を行ってきたという。活動の継続10周年を契機として、「Loop beyond Art 広がる、人と命の輪」...Read More
前回のブログで取り上げた、クリスティーズで、100ドルでオークションにかけられた、マイク・ウィンケルマン氏によるデジタルアート作品 “Everydays: The First 5000 Days”が、75億円で落札された。 上がその出品作だ。Beeple (b. 1981), EVERYDAYS: THE FIRST...Read More
井上由美子と木皿泉 90年代に、最初に注目した脚本家は、井上由美子だ。高村薫原作のNHK『照柿』(1995年)が大傑作だった。単なる二枚目の三浦友和が真に評価され、屈折した役もこなすようになったきっかけに思える。過去に見たドラマのベストワンだと思っている。井上由美子は『14才の母』(2006年)も問題作だった。NHKで...Read More
コロナ禍も日常となりつつある。緊急事態宣言は、首都圏以外は2月末、首都圏は、3月7日に解除らしい。しかしこれを書いている、2月23日天皇誕生日の祝日、表参道は、コロナ前のような人出で混んでいた。 一方で、飲食店は営業時間に制限がかけられ、表参道や裏原でも飲食店は軒並み、閉店している。青山、表参道の裏通りを歩くとテナン...Read More