【Physical Expression Criticism】ドラマニア~テレビドラマの魅力・3~
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【Physical Expression Criticism】ドラマニア~テレビドラマの魅力・3~

井上由美子『照柿』

井上由美子と木皿泉

 90年代に、最初に注目した脚本家は、井上由美子だ。高村薫原作のNHK『照柿』(1995年)が大傑作だった。単なる二枚目の三浦友和が真に評価され、屈折した役もこなすようになったきっかけに思える。過去に見たドラマのベストワンだと思っている。井上由美子は『14才の母』(2006年)も問題作だった。NHKでは弁護士物の『マチベン』(2006年)、『新マチベン~オトナの出番~』(2007年)、『炎上弁護人』(2018年)がある。また、WOWOWドラマの『パンドラ』シリーズは、2008年から2010年、2011年、2014年、2018年という十年ドラマである。『緊急取調室』も2014年から2017年、2019年と続いている。

※『照柿』https://www2.nhk.or.jp/archives/tv60bin/detail/index.cgi?das_id=D0009010637_00000

 90年代、『高校教師』(1993年)で有名だった野島伸司は避けていたが、障害者を扱った『聖者の行進』(1998年)が社会問題に切り込むという、当時としては珍しいスタンスで、はまり、以降はできるだけ見るようにしている。話題になりすぎた『東京ラブストーリー』(1991年)も見なかったが、その坂元裕二は、後に問題作『Mother』(2010年)で衝撃を受け、『Woman』(2013年)や『カルテット』(2017年)など傑作が続いているため、見逃せない。

 井上由美子は木村拓哉の出演作の脚本を何度か手がけている。ドラマ単独初主演の『ギフト』(1997年)に始まり、『GOOD LUCK!!』(2003年)、最近も『BG~身辺警護人』(2018年)など。木村は、北川悦吏子の超有名な『ロングバケーション』(1996年)は見なかったが、『Beautiful Life』(2000年)は、難病の常盤貴子とともに引き込まれた。以降も木村拓哉の出演するドラマは、いずれも優れた脚本家が手がけており、まずはずれがない。

 なおNHKのサイトに「井上由美子とNHKドラマ」というページがあったので、参考までにあげておく。https://www2.nhk.or.jp/archives/search/special/detail/?d=drama023

 次は、木皿泉である。夫婦で執筆する脚本家だが、夫は脳出血の後遺症で車椅子生活、妻はうつ病である。独自の世界を追求し、文芸雑誌で特集されるほどだ。木皿(きざら)は、AKB48の前田敦子(あっちゃん)の『Q10』(2010年)をたまたま見て知った。以降、『世の中を忘れたやうな蚊帳の中』(2011年)、『昨夜のカレー 明日のパン』(2014年)、『富士ファミリー』(2016年、2017年)、『パンセ』(2017年)と、合わせて30年間で15作程度、実に寡作なので、遡って『すいか』(2003年)、『野ブタ。をプロデュース』(2005年)、『セクシーボイスアンドロボ』(2007年)も見てしまった。

『相棒』

古沢良太、根本ノンジ、野木亜紀子

 長寿ドラマの一つ『相棒』もはずせない。初期はまったく見ておらず、娘のために録画してちょっと見たら、はまった。脚本家もさまざまだが、2005年に亡くなった砂本量(はかる)は、初期からシーズン4までに注目すべき作品をいくつも提供している。砂本(1958年生まれ、本名鈴木良紀)は、プロデューサー、映画監督でもあり、立教大学の黒沢清、塩田明彦、青山真治らの映画サークル出身で、仏文学者、批評家、東大学長の蓮實重彦に学んだ、いわゆる蓮實チルドレンの一人だ。

 その後もこのドラマを見逃せないのは、『相棒』を書いている脚本家が後に活躍することが多いためだ。刑事物に太田愛、岩下悠子、山本むつみなど女性脚本家をたびたび起用しているのも特徴で、また、最近注目の古沢良太、根本ノンジなどが以前に『相棒』を書いている。

 古沢(こざわ)は、『外事警察』(2009年)、『鈴木先生』(2011年)、『リーガル・ハイ』(2012年、2013年、2014年)と話題作を手がけ、その後の『コンフィデンスマン』シリーズ(2018年~)が映画化もされている。また、根本ノンジは、現在の『監察医 朝顔』(2020年~)がミステリーと震災を重ねて、圧倒的かつ心をうつ。『相棒』の再放送をつい見てしまうのも、過去の作品で優れた脚本家を再認識する楽しみがあるからだ。さらに、コロナの中で、さまざまな著名人が『相棒』の魅力を語るという番組まで生まれた。

 『逃げるは恥だが役に立つ』(逃げ恥、2016年)で有名になった野木亜紀子ももちろん注目すべき脚本家である。特に『アンナチュラル』(2018年)は何度見ても、見応えがある。ミステリーと社会問題が見事にかみ合った、こういうドラマは珍しい。以降も『獣になれない私たち』(2018年)、『フェイクニュース』(2018年)、『MIU404』(2020年)と油が乗っている。遡って、自衛隊宣伝ドラマともいえる『空飛ぶ広報室』(2013年)も見てしまった。

『池袋ウエストゲートパーク』

再び、小劇場から

 現在の演劇、小劇場の脚本家によるテレビドラマも優れたものがある。代表的なのは、宮藤官九郎だ。『池袋ウエストゲートパーク』(2000年)で注目され、『木更津キャッツアイ』(2002年)、『タイガーアンドドラゴン』(2005年)も若者に人気だったが、朝の連ドラ『あまちゃん』(2013年)で、広く知られた。劇団大人計画の脚本家・俳優であることもよく知られている。大人計画の代表で劇作家の松尾スズキも俳優としてドラマで活躍し、映画監督もつとめている。大人計画の俳優も、阿部サダヲ、荒川良々、小松和重、三宅弘城などがドラマに多く出演し、劇団新感線の俳優、古田新太との共演も多い。歌手、俳優として活躍する星野源も大人計画に所属している。またヨーロッパ企画の上田誠など、ドラマの脚本をてがける劇作家は多い。オンシアター自由劇場出身の岩松了は優れた劇作家、演出家、脚本家だが、最近は俳優活動のほうが多そうだ。

渡辺あや『カーネーション』

朝ドラと大河ドラマ

 NHKドラマの脚本家で注目したのは、渡辺あやだ。最初に見たのは映画『ジョゼと虎と魚たち』(2003年)だが、室生犀星原作の『火の魚』(2009年)でさらに引き込まれた。大腸がん末期だった原田芳雄、そして河瀬直美の映画で主演していた尾野真千子が、ドラマで初めて注目される作品だった。阪神・淡路大震災をテーマにした『その街のこども』(2010年)も、震災体験のある森山未來と佐藤江梨子を起用し、最後はリアルタイムロケの形をとった異色作だった。演出は井上剛、音楽が大友良英。その尾野真千子主演で、渡辺あやが『カーネーション』(20112012年)を書いたので、それまで見ていなかった朝ドラを、初めて全部見ることになった。

 気になる脚本家が朝ドラや大河ドラマを書いても普通はまず見ない。一つには長いからだ。制約も多いらしく、期待して初回を見ると、その脚本家の本来の味が感じられずにがっかりすることが多い。だが、クドカンこと宮藤官九郎作品を追っていたため、『カーネーション』から一年ほどして、『あまちゃん』で朝ドラを再び全部見た。演出の井上剛、音楽の大友良英は『その街のこども』で注目した面々だ。これが大ヒットしたのは、周知のことだろう。

宮藤官九郎『いだてん~東京オリムピック噺~』

『いだてん』の魅力

 この『あまちゃん』も、震災後をリアルに描きながら、破天荒で、朝ドラとしては異質だったが、クドカンの大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』(2019年)も凄かった。オリンピックの歴史、東京オリンピックの描き方などに、オリンピック批判の要素も盛り込み、多くの点でドラマの常識を破っていた。NHKの意図は、今回の東京オリンピック成功に向けた企画だったろうが、見ていると、そんな思惑は消し飛んだ。

 そして、2021年、久しぶりの民放でクドカンの『おれの家の話』が始まった。初回から西田敏行の残念な裸体を晒すなど、「飛ばして」いるので、見逃せない。プロレスと能という異質な組み合わせで、落語家を描いた『タイガーアンドドラゴン』といい、古典芸能を生かす発想が新鮮だ。ちなみに、映画より魅力的と思われたドラマ『ロクヨン』(2015年)の大森寿美男も演劇出身。大友良英の音楽も素晴らしいが、主演がピエール瀧だったため、再放送は期待できない。『あまちゃん』、『いだてん』ともに彼が出演している。なお、2023年の大河ドラマ『どうする家康』を古沢良太が担当するらしいので、見るかどうか悩むところだが、タイトルから破天荒が期待できそうだ。

 三谷幸喜はドラマと演劇が両輪といっていい。というのは、劇団で活動すると同時にテレビでも脚本を書き始めていたからだ。ドラマの「古畑任三郎」シリーズは代表作で、楽しませるが、ドラマは『王様のレストラン』(1995年)以降はほとんど見ていない。その話法に飽きたことと、その後、大河ドラマ『新選組』(2004年)に挑戦したときに、前述のように、大河の枠組みでいまひとつに思えたからだ。

中園ミホ『ドクターX~外科医・大門未知子~』

大ヒットドラマとWOWOWドラマ

 『相棒』もそうだが、大ヒットドラマは、なかなか手を出さず、後にはまるものも多い。『ドクターX~外科医・大門未知子~』(2012年~)もその一つだ。中園ミホの脚本に注目した。この原型が『ハケンの品格』(2007年)だ。ドキュメンタリーの『プロジェクトX』(20002005年)をパクった田口トモロヲのナレーション、フリーの女性が活躍する設定など、『ハケンの品格2』(2020年)が13年ぶりで放映されるときに、改めて認識して、再放送を見た。

 検死官ものなどにはまるきっかけは、海外ドラマだった。WOWOWで放映されていた女性検死官ミーガン・ハントが活躍する『ボディ・オブ・プルーフ/死体の証言』(2012年)である。それで日本のものも見るようになり、長寿ドラマ『科捜研の女』(1999年~)も最近ほとんど見ている。これは脚本がいま一つ緩いことが多いが、時には遊んだ設定などで楽しませる。鑑識ものは、横山秀夫原作の『臨場』(2009年~)がなかなかハード。他にも、天海祐希、かたせ梨乃が主演など、鑑識や法医学などに焦点を当てたドラマは多々ある。

 この背景には、ベストセラーになったロバート・K・レスラーの『FBI心理分析官』(1994年)などによるプロファイリング、プロファイラーの流行、そして上野正彦の著書『死体は語る』(1989年)などの影響があるように思う。ちなみに「シリアルキラー」という言葉を流行らせたのもレスラーであり、彼の情報提供でトマス・ハリスは『羊たちの沈黙』(1988年)などを書いたという。

 こういったミステリー系ドラマを含めて、WOWOWのドラマは注目に値する。すでに井上由美子のところで述べたが、ドラマと映画の中間ともいえる丁寧な作品づくりと、広告主がいないため制約が少ないのも特徴だろう。後に劇場公開されるものもある。シナリオ募集をして新人の発掘にも熱心だ。

 また、WOWOWの海外ドラマも掘り出し物が多い。先述のデビッド・リンチの『ツイン・ピークス』シリーズ、そして最近では、『プロディガル・サン~殺人鬼の系譜』(2021年)がおもしろい。刑務所に入っているシリアルキラーの父親、富豪の母親、プロファイラーの息子、キャスターの娘がさまざまな殺人事件を父親のアドバイスとともに解決していく。米国ドラマの翻案の『コールドケース』も人気で、映画監督の瀬々敬久、瀧本智行、劇作家の蓬莱竜太らが脚本を書き、シリーズ3にまでなっている。朝ドラ『まれ』(2015年)を書いた篠﨑絵里子もWOWOWで多くの意欲作を発表している。今後もWOWOWドラマに期待したい。

 現在までのドラマについて述べた。ドラマ論も書いているが、「3」も思ったより長くなってしまったので、それは次回「4」で掲載することにする。

【Physical Expression Criticism】ドラマニア~テレビドラマの魅力・2~
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Nobuo Shiga
批評家・ライター
編集者、関東学院大学非常勤講師も務める。舞踊批評家協会、舞踊学会会員。舞踊の講評・審査、舞踊やアートのトーク、公演企画など多数。著書『舞踏家は語る』(青弓社)共著『美学校1969~2019 』『吉本隆明論集』、『図書新聞』『週刊読書人』『ダンスワーク』『ExtrART』などを執筆多数。『コルプス』主宰。https://butohart.jimdofree.com/

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