アフリカ音楽に傾倒している訳でもないのに、思わずして、数回にわたって書くことになりそうだ。
今回は、シエラレオネ(共和国、ポルトガル語で「ライオンの山」の意味)。
シエラレオネは、西アフリカの国で、奴隷制度から解放された人々が定住するようになった国である。
19世紀初頭からイギリスの植民地となり1961年に独立するのだが、その後10年以上に及ぶ内戦と、HIVによって、現在でも多くの難民がいる。
そんなシエラレオネの音楽は、ハイライフと呼ばれるアフリカのポップスが多い。
※19世紀からガーナ、シエラレオネ、ナイジェリア、リベリア等西アフリカの英語圏に広まったギター、ジャズ、ブラスバンドなど、ポピュラー音楽の総称。(ウィキペディアより)
また、イギリス領だったせいか、ジャマイカの音楽から影響を受けたミュージシャンも多くいる。
僕がとても好きなミュージシャンの1人にS.E.ロージーという人がいた。
残念ながら、彼はもういない。
パーム・ワイン・ミュージックと呼ばれる、アフリカで最も初期の音楽の一つであるポップスのミュージシャンである。
椰子酒を片手に、なんとも優雅な感じがする(環境保護の観点から椰子農園を反対する人もいる)。
パーム・ワイン・ミュージックには、独立という時代の雰囲気もあるかもしれないが、その頃流行っていたジャマイカのメントや、カリブ海全体で発達したカリプソなど、楽しい音楽の影響があったのだろう。
会ったことのない人、行ったことのない国の曲たちなので、聞く方の夢も広がるというものである。
パーム・ワイン・ミュージックは、その後、ハイライフなどに変化していく。
ハイライフはポップスなので、現在ももちろんあるが、パーム・ワイン・ミュージックというような優雅なものは、文化として、今後、ありえるのだろうか。
現在は、真逆で、シエラ・レオネズ・レフュジー・オルスターズという、内戦の難民たちから出来たバンドがある。
内戦で、隣国であるギニアに逃れ、それでもポジティブに生きようとしたミュージシャンたちによって結成されたバンドである。
彼らの音楽は、ハイライフはもちろん、ジャマイカのルーツレゲエに影響されている。
本場のジャマイカは、ダンスホールレゲエばかりなのに、彼らの音楽はルーツレゲエなのである。
時代に逆行しながら、世界を魅了したのである。
ポール・マッカートニー、キース・リチャーズ、エアロ・スミス、アンジェリーナ・ジョリー…を虜にし、2006年のフジロックにまでも出演した彼らは、本当の意味で自分たちのすべきことをしたバンドだと、私は確信している。
それは、彼らの曲を聞くとすぐにわかると思う。
ドキュメンタリー映画にもなっているので、興味のある方はぜひチェックしていただきたい。
文・藤井悟
Satoru Fujii
DJ
80年代中頃からレゲエ・ロック・パンク・レベルミュージックDJの草分けとして椿ハウス、P.PICASSO、MIX、328などで活躍。メスティソ、パチャンカ、クンビア、ロックラティーノなどワールドミュージック系レパートリーを得意とし、FUJI ROCK FESTIVAL、朝霧ジャム、EARTH GARDENなどの出演や、2000年からは舞台を欧米に移し、STREET BEAT FESTIVAL(イタリア)、世界最大のレゲエフェスティバルROTOTOM SUNSPLASH 2012など世界トップクラスのアーティストと共演。2017年、歴史と考古学の間の空白の時間に迫るエッセイ「連想」も出版した。
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