【World Music Explore】バスクという国を知っていますか?

【World Music Explore】バスクという国を知っていますか?

上:Huntza concèrt during Hestiv'Òc 2017.


 バスクは、スペインの北、フランスにまたかがっている、スペインの自治区であり、フランスの地方の1つでもあります。歴史はとても古く、また、とても複雑な流れがあり、現在はスペインとフランスに吸収されましたが、その独自の文化性から、スペインやフランスから独立をしようとしている地方の一つです。文化も言葉も独自ですから。

※歴史的なバスク地方は、南バスクまたはスペイン・バスクと呼ばれるスペイン領土の4地域、北バスクまたはフランス領バスクと呼ばれるフランス領土の3地域の計7領域からなる。バスク地方全体の面積は岩手県と宮城県を合わせたほどの20,947 km2。人口は約308万人(2011年現在)(Wikipediaより)

バスクの国旗
スペイン北部とフランスにまたがるバスク地方7州

 さて、しかし、今回は民族音楽ではなく、現代のバスクの音楽について書こうと思います。

 バスクにはETA(エタ)という地下組織があり、今でも不当に逮捕された人々の釈放を訴えて活動しています。バスクのカフェに行くとかなりの確率で、不当に逮捕された人々の顔写真付きの彼らの釈放を訴えたポスターを見ることができます。数年前までは、ミュージシャンによる独立運動も盛んに行われましたが、以前よりおおらかな時代になったせいか、現在は独立の声をあげるミュージシャンは主流ではなくなってきているようです。

 まず、そのバスクの独立運動の中心になっていて、「Black is Beltza」という近日公開される映画(下記Youtube参照)も作った、Fermin Muguruza (フェルミン・ムグルサ)というアーティストを紹介します。彼の代表曲は何曲もありますが、初期の最も衝撃的な曲の1つにSari Sari(サリサリ)という曲があります。1985年、彼がまだKortatu(コルタトゥ)というバンドをやっていた時の曲です。この曲は、大ヒットして、バスクだけではなく、スペイン全土をはじめ、イタリアなどでヒットしました。ちなみにフェルミン・ムグルサは、警官の汚職を「Ustelkeria」という自身の曲で追及して、裁判に勝ったこともありました。

 まずは、彼の初期の代表作!Sari Sari / Kortatu

 フェルミンは、80年代はKortatuというスカパンクのバンド、90年代に入るとNegu Gorriak(ネグ・ゴリアック)というハードコアパンクのバンドで活躍します。それと同時に、彼はテロリストとしてスペインという国に目をつけられることになっていき、国内の活動にも制限がかけられました。

 そして、少し時代は流れ、2000年代に入ってくると、若いミュージシャンたちが彼のバックバンドを務めるようになりました。それがEsne Beltza(エスネ・ベルサ)です。

 フロントマンのXabi Solano(シャビ・ソラーノ)は、トリキティージャというアコーディオンによく似た楽器の名手で世界チャンピョンでもあります。彼らの曲は、フェルミンの曲同様かなりアグレッシブです。やはり代表曲はたくさんありますが、今回はpasodoble(パソドブレ)を紹介します。ミュージックビデオには日本に来た時の映像が使われています。

 そして、さらに時代は流れ、現在ではさらに若手のミュージシャンが台頭しています。

 政治的なメッセージが少しずつ薄れてきていますが、逆に、バスクの美しいメロディは復活してきています。文化的な面で、フェルミンなどからの影響はかなり受けている世代でしょう。フェルミンたちによって文化の復興も訴えられていました。

 今でもエスネ・ベルサも伝統的な音楽を盛んにやっていますが、それを現代風にうまくアレンジしたのがHUNTZA(ウンツァ)というバンドでしょう。彼女たちの曲はバスクを飛び出し、スペイン全土でヒットしました。マドリードでも、チケットがソールドアウトしたほどの人気です。

 フェルミンの時もそうですし、エスネ・ベルサの時もそう。そして、ウンツァの時も何万人もの人々が声を上げて盛り上がるのです。バスクの独立を認めたいと思わされてしまいます。

 今回紹介した3つのバンドは全て来日したことがあります。また来ることもあるかもしれません。その時は、是非みることをお勧めします。この世界において、とても重要なバンドだと思うからです。

文・藤井悟
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Satoru Fujii
DJ
80年代中頃からレゲエ・ロック・パンク・レベルミュージックDJの草分けとして椿ハウス、P.PICASSO、MIX、328などで活躍。メスティソ、パチャンカ、クンビア、ロックラティーノなどワールドミュージック系レパートリーを得意とし、FUJI ROCK FESTIVAL、朝霧ジャム、EARTH GARDENなどの出演や、2000年からは舞台を欧米に移し、STREET BEAT FESTIVAL(イタリア)、世界最大のレゲエフェスティバルROTOTOM SUNSPLASH 2012など世界トップクラスのアーティストと共演。2017年、歴史と考古学の間の空白の時間に迫るエッセイ「連想」も出版した。

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