【Art News Liminality】明治神宮の静かな100年祭―「神宮の杜芸術祝祭」と宝物の間から(その1)
宇都志岐青人草(うつくしきあをひとくさ)―応神記[1]
「神宮の杜芸術祝祭」(芸術監督・山口裕美)が明治神宮を舞台に開催されている。明治神宮の創建100年を言祝ぐ日本人の自然観を体現する芸術や文化のフェスティバルだという。「天空海闊(てんくうかいかつ)」(2020年3月20日~12月13日)、「紫幹翠葉(しかんすいよう)」(2020年7月10日〜9月27日)、「気韻生動(きいんせいどう)」(開催延期)といったシリーズ展と被災地復興支援「サンクスフラワー・プロジェクト」展などからなる本展は、9月の雨上がり、青々と生える木々とともに静かに訪れる人々を迎えるものだった。
「天空海闊」で展覧された野外彫刻作品は、名和晃平、船井美佐、三沢厚彦、松山智一によるもの。明治神宮の歴史や文化に寄せて制作したという。やわらかな秋の陽射しを受けて輝く《Wheels of Fortune》(松山智一)は、古事記では神の使いとされた鹿の角に国儀車を思わせる車輪が接合されたかのようなもので、ステンレスの有機的な流線が緑に映える作品だった。
「紫幹翠葉」を彩るのは30名の現代アーティストに委嘱された扇面型作品群やコンセプチュアルな視点から制作された屏風、衝立、掛軸、カンバスといったものだ。季節と心情の移ろいを瑞々しい透明感のある写真のグラデーションで表現する《鯉桜》(朝山まり子)、森林のなかに漂う微細な知覚の戯れを精巧なアクリルの筆触とともに辿る《森の意識》(畑山太志)、あるいは持続する時間のなかで多層性をもって出現する木々の揺れをシルクスクリーンで転写する《Population》(増田将大)など、それぞれの作品に伝統的なモチーフと現代的な知覚・表現の問題系が同時にみられるものだった。
(写真:F.アツミ)
その2に続く・・・
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