W'UP!★4月6日~5月5日 Matthew Brandt little puddles Gallery COMMON(渋谷区神宮前)

W'UP!★4月6日~5月5日 Matthew Brandt little puddles Gallery COMMON(渋谷区神宮前)
Heidelberg Blanket C3 (Damiani Editore, Faenza, Italy). 2018.
Embroidery on Heidelberg cleaning blanket. 137.2 × 108 cm (54 × 42 1/2 in)
 

2023年4月6日(土)~5月5日(日)
Matthew Brandt
little puddles

 Gallery Commonではアメリカ人アーティストのマシュー・ブラントの日本で初めての個展「little puddles」(小さな水たまりたち)を開催します。

 マシュー・ブラント(1982年生まれ、ロサンゼルス)は、予想だにしない素材や技法を取り入れた実験的な写真作品を提示し、写真とは「光沢紙に整然とイメージが印刷されたものである」という固定観念を覆します。例えば、「Lakes and Reservoirs」シリーズでは湖の写真をその湖の水を使って現像し、「Waiʼanae」シリーズではハワイの風景が写った写真を地中に埋め、自然に起きる浸食によって島の痕跡を刻み込んでいます。こうしたブラントの作品は、時間的な瞬間を捉えるものであるという写真の限界に挑んでいるとも言えます。

 写真を「難解な錬金術」とするブラントは、その拡張性を示したいという欲求に突き動かされて、新しいシリーズに取り掛かる度に新たな素材や技法に挑んでいます。この展示「little puddles」では、複数のシリーズの作品を通じてブラントのそうした「流動的」な活動を映し出します。インクの染み、貯水池の水、溶融ガラス、銀液などの液体によって制作された本展の展示作品は物理的な意味でも「流動的」であり、また私たちが住む世界を「大きな水域」に喩えると、そこから現れた「水たまり」としての作品は概念的な意味でも「流動的」です。

 ブラントにとって作品を作ることは、自身の内側を巡る旅であると同時に、その外の世界を理解するための手段でもあります。どうすればある対象を真に描き出すことができるのか?その方法を示すために、描写するその対象自体から作品を作り出し、そしてその素材の真価に迫ろうとします。また、写真の本質に実験性を見出しているブラントの作品は、テクノロジーに何ができるかを示しているとも言えます。テクノロジーは私たちの知覚を反映しているものであり、ブラントは新たな技法に挑むことで私たちの新たな知覚様式にも挑んでいるのです。

 今回の展示では、複数のシリーズから作品をピックアップしています。「Heidelberg Blankets」シリーズからは、4点の作品が展示されます。シリーズ名はハイデルベルク社の大型印刷機のクリーニングに使用されるブランケットから来ています。2014年、ブラントは自身の「Lakes and Reservoirs」シリーズのカタログを印刷したイタリア・ボローニャのダミアーニ印刷工場で、クリーニング用に使われていたブランケットを貰い受けました。そして自身のアトリエで撮影したスナップ写真を元に刺繍を施すことで、手作業の「遅さ」と機械作業の「速さ」を対比させています。

 「Rooms」シリーズでは印刷技術の限界に挑戦し、それを周囲の環境へのアプローチに用いています。
 ブラントは近年開発されたガラス顔料技術を利用し、かつて誰かの家に吊られていたシャンデリアを写真作品に昇華させます。そのシャンデリアが下がっていた部屋の360度画像をクリスタルそれぞれに吹き付け、以前の持ち主が過ごした記憶を写し出しています。
  「Silver」シリーズは、カリフォルニア、インドネシア、マダガスカルの森林を写した写真に銀液を垂らすことで写真を鏡面に転換し、森林と鑑賞者が併存する空間を作り上げています。

Matthew Brandt. Lake Vyrnwy 27. 2016
Matthew Brandt. Lake Vyrnwy 27. 2016. C-print soaked in Lake Vyrnwy water. 50.8 x 76.2 cm.
Matthew Brandt. Heidelberg Blanket Y3 (Damiani Editore, Faenza, Italy). 2018
Matthew Brandt. Heidelberg Blanket Y3 (Damiani Editore, Faenza, Italy). 2018. Embroidery on Heidelberg cleaning blanket. 137.2 x 108 cm

 一方、やはり自然が描かれている「Carbon」シリーズでは、アルマイト処理された金色のアルミニウムの支持体の上に、カリフォルニアの森林火災で焼けた木が顔料として使用されています。荒れ果てた木々を取り囲む明るい空白は、火事によって失われていった森林のことを鑑賞者に想起させます。

 「Joshua Tree」シリーズでは、写真の撮影場所で採集した砂によってシルクスクリーン「印刷」を行っています。ジョシュア・ツリーはロサンゼルスのジョシュア・ツリー国立公園に生える象徴的な木で、文化的・精神的にも生命力のシンボルとなっています。砂によって幻想的に描かれた、視覚的にも物質的にもうつろう作品の上でも、ジョシュア・ツリーはまるで地球のものではないようなその
不思議な存在感を発し続けています。

 共生関係とも言えるような、ブラントの写真に対する有機的で流動的な態度がこの展示の骨格となっています。ブラントは、自身の意図を素材に反映させるのと同じくらい、環境や周囲の状態が作品の方向性や最終的な形を作っていくことを良しとしています。ときに覗き趣味的、ときに自己中心的と言われるカメラの一方的なまなざしは、そのまなざしを向けられる対象が作品自体に還流してくることによって和らぎ、写真の中の客体は鑑賞者と対話する主体へと転換されるのです。私たちはこうした小さな時間のかけらの中に、より大きな物語を示唆する痕跡を見ることができます。それはまるで、潮が引いて海岸に取り残された水たまりが、また元の海に戻っていくように。

Matthew Brandt. Lamps Plus store. 2021
Matthew Brandt. Lamps Plus store. 2021. Photo fused glass on painted metal chandelier armature. 50.8 x 45.7cm
Matthew Brandt. Wai'anae 30188. 2015
Matthew Brandt. Wai'anae 30188. 2015. Chromogenic print buried in Wai'anae, Hawai'i. 76.2 x 45 cm

Matthew Brandt
 マシュー・ブラント(1982年ロサンゼルス生まれ)は、クーパー・ユニオンで美術学士号を取得後、UCLAで美術修士号を取得。現在もロサンゼルスを拠点に活動。湖の水や岩、グミやコカインなど、思いもよらない素材や制作方法を写真の現像に使用するブラントは、写真で現れるイメージを制作に使用する素材と結びつけており、その過程で社会問題や環境問題を探求している。
 過去にはアメリカのニューアーク美術館、コロンバス美術館、ヴァージニア現代美術館、 SCAD美術館で個展を開催。最近のグループ展では、「New Territory: Landscape Photography Today」(デンバー美術館)、「The Magic Medium」(ロサンゼルス・カウンティ美術館)、「Light, Paper, Process: Reinventing Photography」(J ・ポール・ゲティ美術館、ロサンゼルス)、「Second Chances」(アスペン美術館、コロラド州)、「What is a Photograph?」(国際写真センター、ニューヨーク)、「Land Marks 」(メトロポリタン美術館、ニューヨーク)などがある。2015年にプリピクテ賞の最終選考に残り、パリ市立近代美術館の展覧会で作品が展示された。
 ブラントの作品は、メトロポリタン美術館(ニューヨーク)、ナショナル・ギャラリー・オブ・アート(ワシントンDC)、 J ・ポール・ゲティ美術館(ロサンゼルス)、グッゲンハイム・コレクション(ニューヨーク)、ブルックリン美術館(ニューヨーク)、ニュー・サウス・ウェールズ州立美術館(シドニー、オーストラリア)、ヴァージニア美術館(リッチモンド)、シンシナティ美術館、ロサンゼルス・カウンティ美術館(LACMA)、ハマー美術館(ロサンゼルス)、デンマーク王立図書館、国立写真美術館(コペンハー
ゲン)、デンバー美術館(コロラド州)、ハイ美術館(ジョージア州)、デトロイト美術館(ミシガン州)、コロンバス美術館(オハイオ州)などのパーマネント・コレクションに収蔵されている。2014年、モノグラフをイタリアのDamianiより刊行。

ポートレイト
Photo by Graham Walzer.

Matthew Brandt little puddles
会 期 2024年4月6日(土)~5月5日(日)
時 間 12:00~19:00
Opening Reception 4/5(金)19:00~21:00
展覧会ホームページ https://www.gallerycommon.com/ja/exhibitions/little-puddles-matthew-brandt

W’UP!★3月23日~4月14日 深瀬昌久 展 SAI(渋谷 MIYASHITA PARK)

W’UP!★11月18日〜12月26日 Nerhol「REVERBERATION」 THE MASS(渋谷区神宮前)

Gallery COMMON(渋谷区明治神宮前)

住所東京都渋谷区明治神宮前5-39-6 B1F
TEL03-6427-3827
WEBhttp://www.gallerycommon.com/
営業時間*112:00~19:00
休み*2月、火
ジャンル*3現代美術
アクセス*4表参道駅A1出口より徒歩約6分、明治神宮前駅7番出口より徒歩約8分、渋谷駅B7出口より徒歩約9分、原宿駅東口より徒歩約12分
取扱作家 
*1 展覧会・イベント最終日は早く終了する場合あり *2 このほかに年末年始・臨時休業あり *3 現代美術は、彫刻、インスタレーション、ミクストメディア作品、オブジェなども含まれます *4 表示時間はあくまでも目安です 【注】ギャラリーは入場無料ですが、イベントにより料金がかかる場合があります

情報掲載について

当サイトへの掲載は一切無料です。こちらからご登録できます。https://tokyo-live-exhibits.com/about_information_post/

コメント

*
*
* (公開されません)