W'UP!★2月23日~3月30日 第8回展覧会「言ったことない息」/4月4日~5月12日 第9回展覧会「花へ、ふたたび問ふこと。」 Up & Coming(渋谷区神宮前)

第8回展覧会「言ったことない息」
詩霖 栗田平手 矢野紗季
会 期 2025年2月23日(日)~3月30日(日)
開場時間 12:00~19:00(金・土は20:00 まで)
休場日 火曜日
会 場 Up & Coming(東京都渋谷区神宮前3-42-18)
アクセス 東京メトロ銀座線「外苑前駅」3番出口より徒歩4分
URL https://upandcoming.tamabi.ac.jp



必要なことを伝えた。聞かれた質問に答えた。
相手はそれに頷いて、私も頷いた。
「これで大丈夫、明日もよろしく」と言ったその口からはスースーと言葉にならなかった息が一緒に漏れている。
真昼の星、かつて建物が建っていた空き地、言葉にならなかった息。
星は決して夜になるのを待っておらず、空き地は建物を求めていなくて、私たちが言いたかったのは本当に言葉だったのか。
何かを作ることは、すでに世にあるたくさんの物たち、考えたちの間にわずかな隙間を見つけ点を打っていくような作業で、そんなことをどうしてもしてしまうのは、言葉にならなかった息の二酸化炭素で一杯になったこの自分がとても苦しいから、埋め尽くされた物たちや考えたちの間にわずかな穴を空け、外気を求める。
空けた穴から外気が流れ込んできてほっとするのもつかの間、その外気でさえ隣の誰かから流れ込んできたものであることに気が付き、慄く。
室内に安心できる場所を作ろうとすると部屋はどこまでも小さくなる。自分では入れない小さな部屋を作り人形を居させてまで、部屋は縮む。いつまでもそうしていることはやはりできず窓を開ければ部屋はどこまでも拡大していく。
3人は、すでに存在する他者や物体の中で自分がどう生きていけばいいのか、よくないのか、よくなくても良いから、そのようなことをずっと考えていた。
それらを考える場は縮小した部屋だったり、広がりきった野外だったり、外気との境に作った窓だったりした。
本展では3人各々が2階建てのこの会場を間取っていき、3つの部屋がクロスオーバーする空間を作ることになるだろう。
言ったことのない息で酸欠になった部屋から行ったことのない域へ、行き来を繰り返すこの部屋を、意味と意味の間に打たれる句読点のように、街の中に置く。
多摩美術大学では、卒業後のキャリア形成支援を目的として、「Up & Coming」というアートスペースを運営しています。アキバタマビ 21 として活動してきましたが、入居していたアートセンター、3331 Arts Chiyoda の閉館に伴いスペースを外苑前に移転し、2024年4月から名称を新たに再出発しました。展覧会は年間約8回開催。展示·関連イベントの企画から広報物·アーカイブ作成までをアーティスト自身が手がける自己プロデュースで運営しています。
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第9回展覧会「花へ、ふたたび問ふこと。」
曽田萌 髙野真子 宮林妃奈子 山口彩紀
会 期 2025年4月4日(金)~5月12日(月)
会 場 Up & Coming(東京都渋谷区神宮前3-42-18)
開場時間 12:00~19:00(金・土は20:00 まで)
休場日 火曜日
アクセス 東京メトロ銀座線「外苑前駅」3番出口より徒歩4分
URL https://upandcoming.tamabi.ac.jp
- 曽田萌《浮遊する庭》 2024、 キャンバス、油絵具、蜜蝋、植物、 ミクストメディア、160×320×2 cm Photography by Huang Min
- 髙野真子 《I was born》 2022、映像
- 宮林妃奈子《雲の根っこ》2024、綿布、油絵具、木炭、194×162×3cm Photography by Takahiro Tsushima
- 山口彩紀《赤い湖》 2022、キャンバス、油絵具、30.3×130.3cm
21世紀のこの世に、芸術作品を解き放ち、作品を通して自ら社会へ語りかけるためには、私たち現代作家は、これまで以上に自身の「こころ」の根源的な部分を問いただすような営為が必要であると感じている。
そのような背景から自身の根源的な意識を探ったとき、同じ星で、同じ女性として、同じ地を歩いた作家が残した言葉や生き様、芸術作品としてさまざまな形態で残された結晶は、現代作家である私たちの根源的な「こころ」の結びつきとして、貴重な存在となっている。
本展の出品作家が影響を受けた作家として、ジョアン·ミッチェル、ヒルマ·アフ·クリント、茨木のり子、片岡球子、辰野登恵子、宮脇綾子などが上げられる。
先人たちの強い精神性が表れた作品を目の前にしたとき、まるで作者がそこに実在するかのような神秘的な体験が生まれる。
ときには、戦争や貧困、差別など厳しい社会情勢の中で苦しみながらも生き抜き、己と向き合った形跡の積み重ねには、「個性」というかけがえのないものが生まれていく。
詩人による社会の現実を突き刺すような言葉には、独自の人生観を貫き通して生きた姿が言葉や音として心に響く。画家が苦悩の果てに絞り出した色彩には、心の豊かさが垣間見える。
芸術家は、社会の変動に柔軟な鋭さを与え、色を付ける。作者がこの世にいなくなっても芯のある精神性から生み出された作品は、光を放ち続けている。姿を消して、また現れる蝶のように今もなお、この世に飛び交っている。
原野を感じさせる色彩と大胆な筆致で、まるで地を開拓していくかのような絵画を逝去する103歳まで描き続けた片岡球子(1905~2008)※は、「描くことは心の豊かさを見つけ出せることである」という信念をもたらし、片岡の絵画作品からは、命が尽き果てるまで独自の表現を貫くことの壮麗さを感じさせられる。
私たちには、複雑な社会問題を抱えた現代を生きていくための原動力が必要である。現在も語り継がれる女性作家たちの生きた証の集積は、人から人へと間接的に影響を与えて現代社会へと引き繋がれ、いまを生きる私たちの原動力となる。また、時代を超えて生き続ける芸術作品として、私たちの「生の根幹」となり、新たな木を生み出そうとしている。
本展は、出品作家それぞれの感性などを通して、根源的な精神性という観点から「表現の根本」を再認識することを目的としている。
※片岡球子(1905~2008)北海道出身の日本画家。日本芸術院を中心に活動。『富士』や『面構』などをモチーフに従来の日本画の描き方から逸脱したような大胆な筆致の絵画作品を残し、当時の画壇を中心に新たな風を吹かせた。
ギャラリートーク
日時:4月5日(土)18:00頃予定 *詳細は決定次第告知します
ゲスト 三本松倫代
普段の制作や生活、影響を受けた作家や出来事などについての話を行う予定。
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