W'UP! ★ 田窪恭治「Camélia」/ 小林万里子「オーバーストーリー」KOTARO NUKAGA

W'UP! ★  田窪恭治「Camélia」/ 小林万里子「オーバーストーリー」KOTARO NUKAGA

2021年4月17日(土)~5月22日(土)
田窪恭治「Camélia」/ 小林万里子「オーバーストーリー」
上:Kyoji Takubo, Camélia 2021-#10, 2021, ©Kyoji Takubo

 今回発表されるのは、ヤブツバキをモチーフに描いた新作の切り紙絵のシリーズです。琴平山再生プロジェクトで訪れた、温暖な気候となだらかな稜線の小島が浮かぶ瀬戸内海ならではの穏やかな風土。それと呼応するようなヤブツバキの凛とした佇まいからこの土地の性格を読み取り、「まさに有るが如き花」だと感じ、とても大切な素材になったといいます。特徴的なセピアカラーのドローイングや天然石を用いたモザイク作品など、素材や手法を変えながら田窪作品に繰り返し登場するモチーフです。特別な思いの込められたヤブツバキが、田窪が心新たに取り組む「風景芸術」の幕開けを鮮やかに彩ります。

椿の切り紙絵 ーー 田窪恭治
 「光」と「色」に関する人類共通の興味は、特にニュートンの「光学」とゲーテの「色彩論」を経て、近代絵画以降大きな表現の要素となりました。ドラクロワやターナー、マネやモネの新しい絵画の表現方法、そしてセザンヌやマチスやモンドリアンなど、独自の「色」に対する表現がありました。
 現在では、さまざまな技術革新とともに「色」から「光」へ、あるいは「色」と「光」を総合的に取り入れた方法が一般的になってきましたが、特にマチスが、その後半生で多く制作した色紙を切って貼り付けた「切り紙絵」の手法と、最晩年の《ロザリオ礼拝堂》の色ガラスを透した光が室内に入り、床や壁(タイル画)、天井などに反射して現れる色と光のハーモニーによる表現に影響を受けた私は私自身の「風景芸術」を実施するために、フランスの《林檎の礼拝堂》や金刀比羅宮の《神椿》から2017年に完成した聖心女子大学の自然石モザイクによる《LePommierd’or(黄金の林檎)》を作りました。これらの作品から特定の風景の本質的なイメージをそれぞれ「林檎」や「ヤブツバキ」「黄金の林檎」に見出した私は現在さらに新たな「風景芸術(註)」に向けて進み始めています。
 今回の《椿の切り紙絵》は、私がこれから始める「風景芸術」の最初のイメージなのです。
註:「作家が居なくなった未来においても生き続ける表現の現場こそ、私が目指す『風景芸術』なのだ」田窪恭治『表現の現場』講談社現代新書、2003年

Kyoji Takubo, Camélia 2021-#1, 2021, ©Kyoji Takubo
Kyoji Takubo, Camélia 2021-#7, 2021, ©Kyoji Takubo
Kyoji Takubo, Camélia 2021-#12, 2021, ©Kyoji Takubo

小林万里子《いにしえ山》 2012

 小林は、代表的技法である染織から刺繍、編み物まで多様な手法と素材を組み合わせて「生命の循環」を表現し続けています。昨年11月にCADAN有楽町で展示された作品《熱と水》では山を中心に据えた生態系サイクルを、高さ3m、幅5mにも及ぶ色鮮やかな布素材を用いて圧倒的なスケール感で表現し、街を行き交う人々からも熱い注目を集めました。また、2013年にはスターバックスコーヒー本社ビル、2017年にはパークホテル東京の一室にコミッションワーク《縁》を制作するなど、確かな手仕事と揺るぎない世界観で多方面から高い評価を得ています。
 小林は、小さな疑問をきっかけに自らを取り巻く世界そのものの成り立ちを紐解こうとするように制作しています。それは例えば身近な人や生物の生命の終わり。亡きがらは大地へ還り次の命を生み出す温床となり、手向けられた花が落とした花粉や種を育て次の命にバトンをつなぐ自明の理を改めて考えてみるとき、小林は自身のあり方を問い直します。命の終わりを終焉ととらえず、新たな命の物語の始まりとして位置付け、丁寧につむぎ合わせていくような制作過程からは、壮大な生命の営みへの畏敬の念や祈りにも似た小林の姿勢が垣間見えます。そして、古来から未来永劫に連綿と続く確かな生命の営みのただなかにある、小さな通過点にしか過ぎない私たち一人一人が無自覚に生み出した人工物を、次世代に残すことに対して生じる疑問や戸惑いは、土に還る自然素材を丁寧に選びとる姿勢に反映されているのです。
 今回の展覧会タイトル「オーバーストーリー」には、私たちの祖先たちが生きてきた夥しい数の命の積層の上に成り立っている私たちの今を描く物語、そして私たちが役目を終えて土に還ったその後の命が織りなす世界の物語、というふたつの意味が込められています。様々な空間の特徴を踏まえ、空間全体を使ってコンセプトを具現化することに定評のある小林が「命の円」の薄皮に形を与え、新たな物語をつむぎ出します。

小林万里子
 今を超えたのちに始まる別の時間、物語を想像すると、その世界は既に足元に大きく広がっていることに気づく。
 私たちは誕生から寿命までの時間を、一本の直線のように感じて生きている。直線の時間の終わりには、すべてのものは土へと還る。
 土壌は既に死んだものたちから成る温かい場所である。毎年積み重なる草の遺骸で腐葉土ができ、草の根でゆっくりと土が耕され、鳥が糞と共に撒き散らした種から新しい芽がでる。
 そこから始まる世界では、緩やかに混ざり合い、繰り返され、終わりある直線ではなく、樹木の年輪のように円を描きながら深く豊かに広がってゆく。
 果てしない時間をかけて形成された「命の円」の薄皮を削りながら、私たちはこの世界に何を作りだそう。

小林万里子 《はるばるの隙間から》 2021
小林万里子《まどろみ》 2021

住所東京都品川区東品川1-33-10 TERRADA Art Complex 3F
TEL03-6433-1247​
WEBhttps://www.kotaronukaga.com/
営業時間*111:00 〜 18:00
休み*2日、月、祝
ジャンル*3現代美術
アクセス*4天王洲アイル駅より徒歩8分、新馬場駅より徒歩7分
取扱作家https://www.kotaronukaga.com/artists/
*1 展覧会・イベント最終日は早く終了する場合あり *2 このほかに年末年始・臨時休業あり *3 現代美術は、彫刻、インスタレーション、ミクストメディア作品、オブジェなども含まれます *4 表示時間はあくまでも目安です 【注】ギャラリーは入場無料ですが、イベントにより料金がかかる場合があります

KOTARO NUKAGA

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