W'UP! ★3月17日~5月30日 「交信詩あるいは書簡と触発:瀧口修造と荒川修作/マドリン・ギンズ」 慶應義塾大学アート・センター(港区三田)

アート・アーカイヴ資料展XXVII
「交信詩あるいは書簡と触発:瀧口修造と荒川修作/マドリン・ギンズ」
会 期 2025年3月17日(月)~5月30日(金)
会 場 慶應義塾大学アート・センター(三田キャンパス南別館1階アート・スペース)
開館時間 11:00~18:00
休館日 土、日、祝日、4月26日(土)~5月6日(火)
臨時開館日 4月19日(土)、5月24日(土)
臨時休館日 4月21日(月)、5月26日(月)
入場無料
主 催 慶應義塾大学アート・センター
協 力 荒川修作+マドリン・ギンズ東京事務所、Reversible Destiny Foundation、富山県美術館
ホームページ http://www.art-c.keio.ac.jp/news-events/event-archive/artarchive27/
慶應義塾大学アート・センター・アーカイヴでは様々な資料体を構築している。その一つである瀧口修造コレクションの中にはおよそ3500件に及ぶ書簡がある。書簡は常に外部との諸関係を示しており、ある人物の営為や思考が独自のものであるだけでなく、他者と触発し合う中で紡がれていくものであることをも示している。
本展では、そのようなダイナミズムを瀧口修造と荒川修作/マドリン・ギンズの書簡のやりとりを通して考えたい。さらには資料が、単に過ぎ去った歴史を根拠付ける物なのではなく、新たな歴史を生み出す力となることを示したい。
「紙にひだをつける、ただそれだけの行為。それは交信紙と名づけられるはずの用箋にすぎない。[…]それらはオブジェであり、言葉でもある。永遠に綴じられず、丁づけされない本。」 (瀧口修造「白紙の周辺」『余白に書く』みすず書房、1966年、116頁。[初出:瀧口修造「白紙の周辺」『みづゑ』1963年3月号、美術出版社、69頁。]初出において「交信紙」は「交信詩」と呼ばれている。)
「この作り手は、もともとそこから形づくられた一連の状態のうちに"死ぬ”か“解体する”。言いかえれば、“私たち”というグループ、共存する時空(たいていの場合、個人、“私”として行為すること)は再集合しはじめる。“作り手”は時空におけるそれ自身の再集合についてしりえず、このことは私たちを空白へと連れてゆくのである。/無数の再集合、おなじように無数の空白がある。」 (荒川修作「制作ノート」本江邦夫訳、『第6回オマージュ瀧口修造』佐谷画廊、1986年。)

資料提供:慶應義塾大学アート・センター

資料提供:荒川修作+マドリン・ギンズ東京事務所
瀧口修造(1903-1979)と荒川修作(1936–2010)は様々な形で触発し合う関係にあった。荒川の渡米後、ほどなくして手紙の差出人にマドリン・ギンズ(1941-2014)の名前が加わるが、瀧口の最期にいたるまでその往復書簡は途絶えることがなかった。瀧口は完成にも未完成にも見える自身の手づくり本を「交信詩/交信紙」と呼んでいたが、この概念を字義通り取るならば、書簡のことである。
荒川/ギンズから瀧口へ宛てられた書簡の中には、文字を連ねて用事や近況を伝達することに留まらず、ユーモアや機知に富む方法を用いて書簡を酷使し、新たなメディアへと変成させる準作品のような書簡がいくつもある。例えば、メッセージの書かれた古絵葉書の文字に重ねるように新たなメッセージを書き加えたり、印刷された図像に矢印や数語を加えて別の表現を生成させたりする書簡などのことである。それらは書簡という非常に私的なメディアであるが故に、発信者と受信者にしかわからないある種の秘境性を有する術語が駆使されているかに見える。しかし同時に開かれた濃密な「空白(blank)」を発生させている。書簡(「交信詩」)を共作の場と捉え、その中に蠢く「空白」を通して、瀧口と荒川/ギンズの諸問題を再考することを目指す。
*本展は富山県美術館(瀧口修造コレクション室)で行われている展覧会「⼿紙と漂流詩」(2024年11月–2025年2月)、慶應義塾大学で行われるシンポジウム「パピエプリエ 02:瀧口修造と荒川修作/マドリン・ギンズ―書簡または余白と空白」(2024年12月)と「手紙」というテーマを共有している。 現在、慶應義塾大学アート・センター、荒川修作+マドリン・ギンズ東京事務所、Reversible Destiny Foundationは、瀧口と荒川/ギンズが互いに送りあった書簡整理を共同で進めており、本展示はその整理を背景に企画された。
作家プロフィール
瀧口修造(1903–1979)
1920年代後半より詩人として活動するとともに、シュルレアリスム受容の代表的な担い手となる。戦前の代表作『近代藝術』(1938 年)は戦後美術の展開において一つの指標となった。美術批評家、展覧会のオーガナイザーとしての活動に加え、1960年以降、「手づくり本」と呼ばれる自作本の制作を行う。「詩は行為である」(「詩と実在」1931年)というモチーフを片時も手放すことなく「実在」「物体」「主体」等をめぐる本を通した実験を行った。代表作として、『余白に書く』(1966年)、『瀧口修造の詩的実験 1927~1937』( 1967年)『マルセル・デュシャン語録』(1968年)などがある。国内外の幅広い交友を跡付ける諸作品/オブジェが書斎を満たしていた。
荒川修作(1936–2010年)/マドリン・ギンズ(1941–2014年)
荒川修作は、1950年代後半より美術家として活動し、1961年に渡米。詩人のマドリン・ギンズと1962年に出会い、以降ニューヨークを拠点に共同制作を展開した。1960年代前半から開始されたダイアグラムを用いた絵画における一連の実験が《意味のメカニズム》としてまとめられる。その後、芸術と身体の問題へと傾注し始め、1990年代以降は建築的作品を多く手がける。主な作品に《遍在の場・奈義の龍安寺・建築する身体》(1994年)、《養老天命反転地》(1995年)、《三鷹天命反転住宅 In Memory of Helen Keller》( 2005 年)などがある。
関連イベント
ギャラリートーク
日 時 2025年4月19日(土)14:00~15:10
解説 本間桃世、松田剛佳(荒川修作+マドリン・ギンズ東京事務所)、久保仁志(展示企画者)
《三鷹天命反転住宅 In Memory of Helen Keller》を実況中継
会場 慶應義塾大学アート・センター シンポジウム
日時 2025年5月24日(土)15:00~17:00
登壇 桑田光平、塚原史、平倉圭、本間桃世、松田剛佳、山本浩貴(いぬのせなか座)、久保仁志
会場 展覧会ウェブサイトにて告知。
※ 予定は予告なく変更されることがあります。
※ 詳細は下記展覧会ウェブサイトで順次公開いたします。
http://www.art-c.keio.ac.jp/news-events/event-archive/artarchive27/
アクセス 田町駅(JR山手線/JR京浜東北線)徒歩8分、三田駅(都営地下鉄浅草線/都営地下鉄三田線)徒歩7分、赤羽橋駅(都営地下鉄大江戸線)徒歩8分
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