W'UP★5月16日~5月31日 石神 雄介 個展「Echoes / エコーズ」 Quadrivium Ostium(神奈川県鎌倉市)

石神 雄介 個展「Echoes / エコーズ」
会 期 2026年5月16日(土)~5月31日(日)
会 場 Quadrivium Ostium(神奈川県鎌倉市浄明寺5-4-32)
開館時間 11:00~17:00
休館日 火曜日、水曜日、木曜日(5月19日、20日、21日、26日、27日、28日)
入館料 無料
ホームページ https://quadriviumostium.com
人である限り常に心の奥底で揺れ動く喪失の情動を油彩に描く石神雄介。深い思索にもとづく作品は2022年FACE展で優秀賞を受賞するなど、いま注目を浴びている作家の個展です。
石神雄介は、わたしたちの心の奥底でひそかに揺れ動く喪失の情動を油彩に定着させながら、記憶をモチーフに、時間、土地と移動、無意識と意志の交差点を描き続ける画家です。石神の特長は、言葉と絵画がともに響き合うことで作品が成立していることです。




見どころ1. 絵画と言葉 Concept「Echoes /エコーズ」の概念と文脈
「Echoes / エコーズ」=「こだま」という現象が、音が山や谷に反響しながら変容してゆくように、ひとつの記憶のイメージとそこから引き起こされる感情は、時間と空間を超えて呼応し、やがて別の誰かの内部で新たな形として現れます。
石神の作品における「記憶のイメージ」体験として印象に残るのは、彼の曽祖父がバナナ畑で佇む小さな作品です。古いフィルムを見ているような、おぼろげな記憶の残照のようにぼんやりとした輪郭の人物のシルエットは、得も言われぬ記憶の深層心理へと導くものでした。作品と鑑賞者、過去と現在、自己と他者のあいだに働く見えない磁場こそ、石神の芸術が生まれる場所なのです。
見どころ2. 思索の旅 ―ユング、バルト― へと誘う絵画芸術
画面に繰り返し現れる水、光を携えた人物、闇の中に蠢く者は、カール・グスタフ・ユング(精神科医・心理学者 1875-1961)が唱えた、人類が文化や時代を超えて共有する元型(アーキタイプ)-影、アニマ、自己-の普遍的なイメージの現代的変奏として読むことができます。そして、今展のテーマ「Echoes / エコーズ」は、ユング的な「共時性」(シンクロニシティ)-因果関係を超えた意味ある一致-の感覚とも響き合っています。
一方で、『言い表せないその領域の存在こそが、私たちたり得るために必要なのかもしれない』という石神の言葉は、ロラン・バルト(哲学者 1915-1980)が問いかけた「白いエクリチュール」―言語が意味に回収される手前のある種の沈黙の地帯-という感覚と深く共鳴します。また、『目前の絵画から、背後の記憶から、私からあなたへ、果てしなく呼応するこだま』という絵画観は、バルトが「作者の死」で述べている「エクリチュールの空間は巡回するもの」-「あらゆる折り返し、あらゆる層を通じて連続する」という考えと重なります。
絵が完成した瞬間に作者の意図から離れ、観る者の記憶や無意識と結びついて新たな「Echoes / エコーズ」=「こだま」を生み出し続けるという構造は、まさにバルト的なテキストの開放性そのものといえるでしょう。
見どころ3. 生の痕跡から生まれる普遍的な問い
石神作品には豊かな思索の海原へと誘う力があります。しかし、意図的に思想を援用して描いているというより、個人的な記憶が生み出す磁場が、論理的な語りに抵抗し、直接的に鑑賞者の内部へ届けようとする「土台としての重力」を与えているようにも感じます。
私的な歴史の実存との結びつきが、彼の作品を概念的な夢想絵画に陥らせないのです。「刺さってくる細部」(プンクトゥム)は常に生の痕跡から生まれます。普遍へと開かれると同時に深く私的であること-その矛盾を矛盾のまま抱えていられることが、石神作品の魅力と言えるでしょう。言い換えれば、石神の作品は、普遍的な問いを生きるのが「今在る」ことである、と語りかけてくるのです。(文責:黒田幸代)
プロフィール
石神 雄介(いしがみ・ゆうすけ)/Yusuke Ishigami
1988年 千葉県生まれ
2012年 東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業
2022年 FACE展2022優秀賞
2022年 Idemitsu Art Award 2022入選
グループ展
2025年「絵画のゆくえ 2025」SOMPO美術館(東京)
2024年「Dalston group exhibition -part6-」Gallery Dalston(東京)
「shades」REIJINSHA GALLERY(東京)
2023年「Prologue XIV2023」GALLERY ART POINT(東京)
「DUTCH AUCTION ART NOW VOL.3」銀座蔦屋書店(東京)
「境界としての、ひと、情景」gallery green&garden(京都)
「たいせつなもの展-HERO-」靖山画廊(東京)
2022年「FACE展2022」SOMPO美術館(東京)
「FACE展選抜作家小品展2022」REIJINSHA GALLERY(東京)
「Idemitsu Art Award 2022」国立新美術館(東京)
2021年「ふなばし現代アート展 第8回アラカルト」船橋市民ギャラリー(千葉)
2012年「九人展」Kitchen Bar ノラや(東京)
2009年「地獄絵図」船橋市民ギャラリー(千葉)
個展
2026年「記憶のヴェール」日本橋三越本店 美術サロン(東京)
2025年「深い森-星の旋律-」銀座蔦屋書店(東京)
「追憶の宮殿」靖山画廊(東京)
2024年「Play in the depths(深層の戯び)」Gallery Dalston(東京)
2023年「A place named me」オープンスタジオ(千葉)
「SEIZAN GALLERY TOKYO 凸 石神雄介 - Call -」SEIZAN GALLERY TOKYO凸
「INNER DRIVE」gallery blue 3143(東京)
2022年「透明な日」オープンスタジオ(千葉)
「Call」スタジオ35分(東京)
2021年「画家の模型(眩暈と剥離)」オープンスタジオ(千葉)
2020年「光景の背後」EFAG East Factory Art Gallery(現:葛西A倉庫)(東京)
2015年「頂上への沈降」船橋市民ギャラリー(千葉)
[その他]
2024年 スペース短歌/初谷むい(著)、寺井龍哉(著)、千葉聡(著)時事通信社 装画
アーティストステートメント
身体的な経験を通じた記憶や、イメージの残滓を手がかりにして、絵画を中心とした制作をしています。その中で、人とは何であるか?「私がある」とはどういうことか?を問い続けています。場所や出来事との繋がりの中で、どのように私個人と社会が形成され、関係していくのか。時間や空間は「私」という感覚を通じてどのように規定されるのか。そして、それらはどの程度の可塑性を持つのか。私はこのような認識の問題を読み解き・書き換えることができる媒体として、絵画と言葉、それらによって作られる空間の可能性を探求しています。
Quadrivium Ostium(クアドリヴィウム・オスティウム)
鎌倉市にある古美術と現代アートを扱うギャラリーです。店名はラテン語で「十字路の入口」を意味し、「様々な時代や場所で作られた芸術品が、縁があり此処に集まり次に引き継がれていく」という思いが込められています。「美術館のような空間に住まう」をテーマに設計された自邸の1階スペースを使い、ヨーロッパのアンティーク家具や民藝家具を設えた空間に、古美術や現代アート作品を常時30点ほど展示販売しています。建築デザインは国内外のAWARDで受賞しています。
※2024年は8人の現代アーティストの企画展覧会を開催するほか、様々な文化イベントを開催しています。
※2023年 神奈川県建築コンクール優秀賞 受賞、2023年 A’DESIGN AWARD 受賞(イタリア)
アクセス 鎌倉駅(JR横須賀線、江の島電鉄)東口4番バス乗り場より京浜急行バス(鎌倉霊園正門太刀洗/金沢八景駅/ハイランド循環)に乗車「泉水橋」バス停下車 徒歩5分





コメント