W'UP★9月30日~11月8日 多田圭佑個展「Phantom Emotion」 MAKI Gallery(渋谷区神宮前)

W'UP★9月30日~11月8日 多田圭佑個展「Phantom Emotion」 MAKI Gallery(渋谷区神宮前)
 
Keisuke Tada, Painting of incomplete remains #116, 2023. Oil, acrylic, and pigment on canvas.
33.6 x 24.5 x 5.0 cm. Courtesy of the artist and MAKI Gallery.

2023年9月30日(土)~11月8日(水)
多田圭佑個展「Phantom Emotion」

 Gallery COMMONとMAKI Galleryはこのたび、愛知県を拠点に活動するアーティスト、多田圭佑の個展を両ギャラリーにて同時開催いたします。9月30日(土)より、Gallery COMMONでは「Rhizomed Material」、MAKI Gallery / 表参道では「Phantom Emotion」を開催いたします。両展合わせて約100点を超える新作のペインティングによって構成されるこのプロジェクトは、多田にとってこれまでで最も大規模な展示となります。
 バーチャル空間の体験や特殊造形をはじめとした、仮構世界を横断する経験からインスピレーションを受けた多田は、仮想空間と現実空間における時間と物質の捉え方を探求し、デジタル時代における現実の不確かさに直面させます。

作品画像
Keisuke Tada, Painting of incomplete remains #116, 2023 (detail). Courtesy of the artist and MAKI Gallery.

 MAKI Galleryでの多田圭佑の初めての個展は「Phantom Emotion」と題し、表参道ギャラリースペースにて開催します。現実と仮構されたものの関係性、そしてその影響に強い関心を寄せる多田は、現実とフィクションの間の曖昧な境界を横断し、自身がテーマとする「在ることと無いことのせめぎ合い」を表現する絵画を制作しています。
 多田の作品に対峙すると、私たちの身体は時間と空間の概念が機能しないどこかへと投げ出され、物事の認識や知覚を揺さぶられるような感覚を覚えます。本展で多田は、鑑賞者をバーチャル空間、そして現実と虚構のはざまへの旅に誘い出します。
 「残欠の絵画」シリーズは、一見ヨーロッパの古典絵画のように見えますが、実際には多田自身が彷徨い歩いたバーチャル空間の風景を元に描かれています。19世紀にフランスで活躍したミレーに代表されるバルビゾン派の構図を参照し、その上にエイジングの加工を施すことで生み出されたその佇まいは、遥か昔に画家たちが小さなキャンバスを手に描き残した風景が現代にその姿を現したような雰囲気を持ちます。
 19世紀にフランスで活躍したミレーに代表されるバルビゾン派の構図を参照し、その上にエイジングの加工を施すことで生み出されたその佇まいは、遥か昔に画家たちが小さなキャンバスを手に描き残した風景が現代にその姿を現したような雰囲気を持ちます。

作品画像
Keisuke Tada, Painting of incomplete remains #110, 2023. Oil, acrylic, and pigment on canvas. 24.0 x 20.0 x 5.0 cm. Courtesy of the artist and MAKI Gallery.

 本展で展示される約100点に及ぶ作品は、現実には存在しないにも関わらず歴史のどこかに存在していたことを思わせる風景、例えば荒野、岩肌、山、空、崩れた建造物、使われなくなった生活空間、動植物などをモチーフとし、冒険心を湧き立たせるとともに、どことなく憂いや寂しさを感じさせます。
 本来時間という概念がないバーチャル空間に存在する風景の上に、エイジング加工を施すことにより時間を捏造するという多田の仕掛けによって、永遠に広がり続けるバーチャル空間の中の無限さと、私たち人間の時間的、物質的有限さが対比され、その儚さが一層強調されるようにも思えます。
 サイズが小さく、かつ厚みのあるキャンバスに描かれた作品たちは、その側面が真っ白に塗り固められていることで正面に描かれたイメージとの極端な差を感じさせ、異なる次元に立ち現れ触れることのできない空間として存在している様が醸し出されています。

作品画像
Keisuke Tada, Painting of incomplete remains #106, 2023. Oil, acrylic, and pigment on canvas. 18.5 x 14.5 x 5.0 cm. Courtesy of the artist and MAKI Gallery.


 さらに本展では、絵の具を素材に本物と見分けがつかないほど精巧に門扉を制作した後、それを斧で攻撃し、その破壊の痕跡として現れた内部の色を描画行為とした絵画作品「Heaven'sDoor」シリーズからも作品を展示します。作り上げた扉を多田本人が自身の身体を使って破壊していく様子を捉えた映像とともに展示され、人間の持つ有限性、そしてその限界を認識しながらも越えようとする強い欲求が一層浮かび上がります。
 本展で展示される両シリーズには、フィクションの世界へ行きたい、その世界と関わりたいという欲望や希望、そして同時に二つの世界の間に存在する確固とした断絶を突きつけられる切なさや孤独感が共存します。多田自身がそうであるように、バーチャル空間の中に入り込み、その世界観に魅了される中で生まれる感動や感情は、形容しがたく捉えどころのないものかもしれません。
 そんな幻かに思われるような感覚、感情に触れる稀有な空間を多田は本展で作り出そうとしています。どうぞこの機会に多田がその類まれなる技術と発想で作り出す、現実と虚構のはざまの世界をご高覧ください。
 竹田春菜著

作品画像
Keisuke Tada, Painting of incomplete remains #100, 2023. Oil, acrylic, and pigment on canvas. 5.2 x 6.2 x 5.0 cm. Courtesy of the artist and MAKI Gallery.

多田圭佑 ただ けいすけ
 1986年愛知県名古屋市生まれ。現在も愛知県を拠点に活動するアーティスト・多田圭佑は、2010年に愛知県立芸術大学美術学部油画専攻を卒業後、2012年には同大学大学院にて修士号を取得しています。ゲームをはじめ、バーチャル世界が提供する知覚体験に関心を寄せる多田は、作品を通して現実と虚構の曖昧な境界線を表現しています。木材や鎖、タイルなどを用いたアッサンブラージュのような「trace / dimension」シリーズ、精巧に再現したアンティーク調の門扉を斧で破壊する「Heaven’s Door」シリーズ——そのすべては絵の具で作られた造形物です。「残欠の絵画」シリーズでは、ヨーロッパの古典絵画になぞらえた作品の表面をエイジングすることで捏造の時間を創り上げています。“在ることと無いことのせめぎ合い”をテーマに立体的要素を含む多田 の作品は、これまでにない新しい絵画を追求しているのです。
主な個展は「Traffic」MITSUKOSHI CONTEMPORARY GALLERY(東京、2022年)、「Beautiful Dream」MAHO KUBOTA GALLERY(東京、2020年)、「CHANGELING」rin art association(群馬、2020年)、「BORDER」CAPSULE(東京、2018年)がある他、日本各地や香港 で様々なグループ展に参加しています。

ポートレイト
Photo by Daisuke Omori. Courtesy of the artist.

「Phantom Emotion」
会 期 2023年9月30日(土)〜11月8日(水)
営業時間 11:30〜19:00
会 場 MAKI Gallery(東京都渋谷区神宮前 4-11-11)
定休日 日・月
https://www.MAKIGallery.com
※オープニングレセプション 2023年9月29日(金)19:00〜21:00 @ Gallery COMMON

W’UP!★8月19日(土)~9月17日(日) Yukari Nishi with magma Index ♯7/9月30日~11月5日 多田圭佑個展「Rhizomed Material」 Gallery COMMON(渋谷区神宮前)

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