W'UP ★4月11日~5月17日 原田匠悟「Far Gaze」 タカ・イシイギャラリー 前橋(群馬県前橋市)

160.3 x 110 cm © Shogo Harada 撮影: 髙橋健治
原田匠悟「Far Gaze」
会 期 2026年4月11日(土)~5月17日(日)
会 場 タカ・イシイギャラリー 前橋(群馬県前橋市千代田町5-1-16 サンワビル4階)
開館時間 11:00~19:00
休館日 月曜日、日曜日
入館料 無料
ホームページ https://www.takaishiigallery.com/
原田匠悟は、自身が日常生活で撮りためた写真を参照に、絵画を制作しています。描かれる人物の多くは足元や後ろ姿だけが捉えられ、静物は静けさを湛えています。ペインティングナイフと刷毛を用いた不均一な線や、限定された色彩により、絵画空間は外界との境界を曖昧にし、見る者に独特の心理的な距離感と静謐さを感じさせます。
原田が描く対象は、どことなく心理的な距離感を覚えさせます。人物の多くは足元や後ろ姿だけが捉えられ、その状況を窺い知ることはできません。静物は言葉通り静けさを湛え、その場に取り残されているかのようです。いずれの場面でも見る者の存在が消失し、絵画空間は閉じられています。
描かれるモチーフのシルエットはペインティングナイフを用いた不均一な線から構成され、さらにそこから刷毛を使うことで独特のブレと掠れを生じ、外界との境界線を曖昧にしています。面からなる部分はそれぞれのテクスチャーの再現が省略されており、筆のストロークや薄い絵の具の層が残されているのみです。緑と紫の補色関係によって黒を作り出していることを代表に、意図的に限定された色彩は情報量を絞り込み、フィルターがかかったような視覚的効果を与えています。
原田の作品はすべて自身が日常生活で撮りためてきた写真を参照し生み出されています。制作の基盤にある、絵を描くことは原体験を復元することだという考えからは、写真と記憶の関係性を巡る機微を捉えようとする意図が読み取れます。スマートフォンやデジタルカメラの普及により体験をその場で手軽に記録する何気ない行為が、日々の経験とその記憶の定着に大きな影響を与えていることは言うまでもありません。撮った写真を見返すとその場で認識していなかったことに気づく現象は、イメージ消費にまつわる象徴的な出来事の一例でしょう。原田の制作は、現実をフラットに記録する写真には定着させることができない感覚的で曖昧な要素を画面上に再び取り戻そうとする試みです。キャンバスを前に自らの体験を反芻し生み出されたペインティング作品は、写真を撮り、蓄積し、見返す体験の繰り返しが組み込まれる中で、私たちが日常にどのような眼差しを向けているか改めて問いかけます。

今ある目の前の光景を、過去に存在したものとして、写真を眺めるように、ある種の俯瞰した視点で捉える節があります。数年前、実家で若い頃の母と当時の母の友人たちが写った写真を見つけたことがありました。そのとき私は妹とその写真を見ていて2人で「エモい」と言ったのを覚えています。「エモい」という言葉をよく分かっていませんでしたが、こう言い表す他に思いつかなかったのだと思います。
他人のように見える母と、かつて確かに存在した光景であるという事実が瞬時に想像を巡らせ、感情を揺さぶり私に何か突き刺さるような感覚でした。同時に今私が友人たちと過ごしている光景も数十年後はこう見えるのかもしれないと感じました。かつて確かに存在した光景と経過した年月がそうさせるのであれば、私の絵もいずれそうなれば幸せだと思って描いています。(2026年2月 原田匠悟)
関連イベント
オープニング・レセプション
日時 4月11日(土)17:00~19:00
会場 タカ・イシイギャラリー 前橋
プロフィール
原田匠悟
1997年 京都府生まれ
2020年 京都造形芸術大学美術工芸学科油画コース卒業
2022年 京都芸術大学大学院美術工芸領域修了
個展に「Ceiling gazer」biscuit gallery(東京、2024年)、「mtk+ vol.20 原田 匠悟」mtk+(京都、2024年)
主なグループ展に「路傍のオデッセイ」阪急メンズ大阪 Contemporary Art Gallery(2025年)、「Second Signal」biscuit gallery(東京、2025年)、「グループ展」タカ・イシイギャラリー 前橋(群馬、2024年)、「遠い木々が」ビーク585ギャラリー(大阪、2023年)、「Millennials Scale」The Millennials Kyoto(2022年)


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