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W'UP★7月25日~10月12日 第12回ヒロシマ賞受賞記念 メル・チン展 広島市現代美術館(広島市南区)

W'UP★7月25日~10月12日 第12回ヒロシマ賞受賞記念 メル・チン展 広島市現代美術館(広島市南区)

第12回ヒロシマ賞受賞記念 メル・チン展
会 期 2026年7月25日(土)~10月12日(月・祝)
会 場 広島市現代美術館 B展示室(広島県広島市南区比治山公園1-1)
開館時間 10:00~17:00(入場は閉館の30分前まで)
休館日 月曜日(ただし9月21日、10月12日は開館)、9月24日
入館料 一般1,600円(1,250円)、大学生1,200円(900円)、高校生・65歳以上800円(600円)、中学生以下無料
※( )内は前売りおよび30名以上の団体料金
前売券は7月24日まで広島市現代美術館受付、オンラインショップ「339」にて販売
ホームページ https://www.hcmca.cf.city.hiroshima.jp

 世界最初の被爆地である広島市は、世界の恒久平和と人類の繁栄を願う「ヒロシマの心」を、美術を通して世界へ発信することを目的に、1989年にヒロシマ賞を創設し、3年に一度授与してきました。広島市現代美術館では、その第12回ヒロシマ賞の受賞者となったメル・チンの受賞記念展を開催します。
 メル・チン(1951–)は、環境問題をはじめとする複雑な社会的課題に動機づけられたアイデアを、既存のカテゴリーにとらわれない独自の方法によって表現してきました。彫刻、ドローイング、絵画、ビデオ、アニメーション、ビデオゲームから、大規模な公共インスタレーションに至るまで、ユニークで幅広い作品群は、多様な背景を持つ人々を惹きつけ、社会への関心を喚起してきました。また、地域住民との協働や科学的なアプローチを取り入れた長期プロジェクトを展開し、アートがいかに社会的意識と責任を喚起しうるかを探求してきました。
 日本で初めての個展となる本展は、これまでの代表的な作品を通してメル・チンの活動を紹介するとともに、ヒロシマのために制作された新作を展示し、アートによる社会変革と自己変容の可能性を提示します。

展覧会のポイント
1.いまの世界と向き合う、大規模なインスタレーション作品
 2001年9月11日以降のアメリカを背景に、戦争や植民地主義、そして現在も続く世界の危機的状況を主題とした大規模インスタレーションを紹介します。現実に起きている出来事と鋭く接続しながら、社会と美術の関係を問いかけ、アートによる社会変革と自己変容の可能性を提示します。
2.日本初個展!これまでの活動を制作年順にたどる
 環境問題をはじめとする複雑な社会的課題に動機づけられたアイデアを、独自の方法によって表現してきたメル・チン。初期作から近作までを制作年順に紹介し、メル・チンの活動の軌跡をたどります。地域住民との協働や科学的なアプローチを取り入れた長期プロジェクト「Revival Field」や「Fundred Dollar Bill Project」も紹介します。
3.ヒロシマのための新作は、中沢啓治氏へのオマージュ
 展覧会場の最後の部屋では、本展にあわせて制作された新作を展示します。「はだしのゲン」の作者である中沢啓治氏の少年時代をイメージした彫像が広島に投下された原子爆弾「リトルボーイ」を想起させる大太鼓の上に立ち、両手を差し伸べながら「ともに立とう」と静かに呼びかけます。

展示構成および作品紹介
第1部:奇妙な花の下で
 第1部では、《私たちの民主主義の奇妙な花》を中心に、2002年から2006年にかけて制作されたメル・チンの代表作を紹介します。2001年の同時多発テロ事件後に展開された一連の戦争は、国際秩序を大きく揺るがし、民主主義の名のもとに遂行される暴力の構造を改めて問い直す契機となりました。チンは破壊の象徴である爆弾を「民主主義の花」として提示することで、それを見上げる鑑賞者に現代社会の矛盾について再考を促します。
 チンの関心は、アメリカ南北戦争で発明された弾丸や、ソビエト連邦時代に開発された小銃、ベトナム戦争やボスニア戦争で使用された武器へと広がり、さらにアフリカやラテンアメリカにおける植民地支配、そしてアメリカによる原爆投下といった近代以降の暴力の歴史的連鎖にまで及んでいます。チンは、これらの暴力が社会や個人に残した傷跡を、日常的な素材を用いた造形へと変換することで、暴力の構造を独自の方法で可視化してきました。
 今日、ウクライナ、ガザ、イランなど世界各地で暴力の連鎖が続くなか、チンが示す理念と破壊の矛盾は、いま改めて切実な意味を帯び、現代世界を理解するための重要な視点を与えてくれます。

作品紹介(第1部)
Our Strange Flower of Democracy 2005 私たちの民主主義の奇妙な花
 地表の広い範囲を一掃するほどの破壊力をもつアメリカ製巨大爆弾「デイジーカッター」を、竹と紐で実物大に模した作品。南太平洋の島々では、先祖の霊が天国から飛行機や船で文明の利器を運んでくると信じる「カーゴカルト」と呼ばれる信仰がありました。第二次世界大戦中、住民たちは米軍や日本軍がパラシュートで物資を投下する様子を目にし、積み荷を受け入れるために竹製の張りぼての飛行機を作ったといいます。デイジーカッターはイラク戦争などでも使用され、その爆発は原爆と誤認されるほどの規模でした。アメリカが「民主主義」を掲げて行ってきた軍事行動の矛盾が浮かび上がります。

Safe 2005 安全
 コンゴにおける植民地支配の悲劇を扱った作品。風化した木板に打ち込まれた無数の釘は、背後にある絵画――植民地支配によって美化されてきたコンゴ川の穏やかな風景――を突き破ろうとする試みを象徴しています。金色の額縁には、ゴムの葉や革製のムチ、叫ぶカバの口、ダイヤモンドと矢のモチーフなど、搾取と暴力の痕跡が刻まれています。植民地支配の歴史は、コンゴの社会、経済、文化に深い傷を残し、現在に至るまでその影響が続いています。

Wheel of Death 2002 死の車輪
 Firestone®製のタイヤを素材として制作された作品。破裂したかのようなタイヤの断片が、三体の動物の姿をかたちづくっています。これらの動物は、仏教の「輪廻の輪」において人間の苦しみの根源とされる三毒――貪欲(鶏)、怒り(蛇)、無知(豚)――を象徴し、互いに噛み合った姿で輪の中心に描かれる存在です。工業製品であるタイヤを用いることで、人々の欲望や循環する暴力性を暗示し、現代社会の物質性と宗教的象徴が交差する造形となっています。
Cross for Unforgiven 2002 許されざる者の十字
8丁のAK-47自動小銃を用いて構成された十字型の彫刻作品。この十字の形は、中世の十字軍に用いられたマルタ十字を参照しており、宗教的正義の象徴とされています。一方、AK-47は世界各地で反西洋・反体制の抵抗運動に使われてきた武器であり、単なる兵器ではなく、政治的・文化的意味を帯びた「抵抗のアイコン」として国際的に認知されてきました。許されることのない暴力の記憶と、信仰・戦争・政治が交錯する歴史の重層性を、象徴的かつ物質的に表現しています。

第2部:逃れられない歴史
 第2部では、初期作品からヒロシマのために制作された最新作まで、メル・チンの50年以上にわたる創作活動を紹介します。1970年代の半ば以降、チンは幅広いメディアを自在に横断しながら、自身のルーツである中国思想や、西欧のメメント・モリの伝統、夢に現れるイメージ、さらにはシュルレアリスムやマルセル・デュシャン以降のコンセプチュアル・アートへの関心など、さまざまな要素を取り込み続けてきました。特定のスタイルやテーマにとどまることを拒み、常に変化を求める姿勢は、彼の作品を特徴づける重要な要素です。
 その一方で、チンが1988年に制作した作品《逃れられない歴史》は、歴史がしばしば円を描くように同じ軌道をめぐり続ける現実を映し出しています。パレスチナとイスラエルの関係を扱ったこの作品は、約40年が経過した現在においても状況が本質的に変わらないという、重く静かな事実を浮かび上がらせ、歴史的な出来事や対立が人々の生活や記憶に長く影を落とし続けることを示しています。

作品紹介(第2部)
Vertical Palette 1976-85 垂直のパレット
 中国の五行思想に着想を得て制作された初期の作品。万物を構成する5つの元素――金(鉛)、木、水、火(煙)、土――がガラス瓶に封じ込められ、作家自身が設計したラックに置かれています。これらの元素は互いに影響を与え合いながら変化し、循環しているとされます。自然界における循環と破壊を象徴するこの作品は、物質に文化的・哲学的な意味を重ね合わせる作家の芸術的立場を確立したものであり、後の環境問題や社会的テーマへの取り組みの原点ともいえる作品です。人間の妊娠周期である9か月を想起させる9年間をかけて制作されます。

Inescapable Histories 1988 逃れられない歴史
 イスラエルとパレスチナの関係を主題とした作品。パレスチナのヨルダン川西岸で採掘されたヘブロン大理石を両国の形状に削り出し、それが中東の伝統的な武器である毛織のスリング(投石具)のポケットに収められています。壁には、大理石が回転した軌跡が擦れた円として刻まれ、両国の運命が歴史的に、そして不可分に結びついていることを示唆しています。歴史は単なる過去の記録ではなく、現在にも影響を及ぼし続ける逃れられない力であることを物語っています。

Revival Field 1991- リヴァイヴァル・フィールド
 環境を彫刻するという発想から始まったアートプロジェクト。1993年にその第一段階が成功裏に完了。実験は、ミネソタ州セントポールの州指定有害廃棄物処理地「ビッグス・アイ埋立地」で実施され、葉や茎に高濃度の重金属を蓄積できるハイパーアキュムレーター植物を用いて、汚染土壌から重金属を抽出するフィールドテストが行われました。収穫された植物のバイオマスを科学的に分析した結果、従来の高コストで不十分な浄化技術に代わる、現地対応型で低技術の「グリーン・レメディエーション(持続可能な土壌修復)」の可能性が確認されました。特に、最も高い金属集積能力を持つテスト植物「スラスビ」の一種が、吸収が困難な土壌条件にもかかわらず、葉や茎にカドミウムを多く含んでいることが判明。このプロジェクトは、米国農務省(USDA)の主任研究農学者ルーファス・チェイニー博士との共同で進められており、現在も世界のいくつかの地域で継続的に展開されています。芸術と科学の融合によって、環境再生への新たな視点を提示するプロジェクトです。

Dispatcher 1998 通信指令員
 ナチス・ドイツの統治時代に、収容所の犠牲者から収集された遺品に関するタイプ文書を目にした経験をもとに制作された作品。感情を排して冷静に記録された言葉が、暴力や迫害を制度化する手段となり得ることを示唆し、無機質なタイプ文字が人間の尊厳を奪う行為に加担していた事実を浮き彫りにします。「ときに言葉は剣を導く」――オーストリア・ウィーンの古物市で購入されたタイプライターを通じて、過去の記憶と向き合いながら、言葉の力と歴史の重みを問いかける作品です。

Bat and Dove 2007 コウモリとハト
 平和の象徴であるハトと闇や不安の象徴とされるコウモリが、夜空のような墨色の空間で抱擁し、あるいは対立する瞬間をとらえた作品。西洋では不吉の象徴であるコウモリですが、中国では「福」を呼ぶ縁起物として親しまれています。両者の象徴性は文化や宗教によって大きく異なります。空中で交錯する両者の姿は、単純な二項対立を超えて、象徴の意味が文化的に揺れ動くことを示しながら、見る者に多層的な解釈を促します。

The Funk & Wag from A to Z 2012 ファンク&ワグナルズ百科事典:AからZまで
 1953~56年版のファンク&ワグナルズ社発行『ユニバーサル・スタンダード百科事典』全25巻の図版を素材に制作した524点のコラージュからなるインスタレーション。各巻を独立したイメージの集合体と捉え、そこから可能な限り多くのイメージを抽出し、ダダのフォトモンタージュの手法に倣って異なる文脈のイメージを組み合わせました。個人の記憶と社会で共有される知識が重なり合い、新たな連想が生まれます。残された製本や切り取られたページも展示に組み込むことで、知の体系を再編集する視覚的思考のプロセスを可視化しています。

In Memory of Muhammad Hani Al-Zahar 2024 ムハンマド・ハニ・アル=ザハルの記憶に捧ぐ
 2023年12月1日にガザで死亡した5か月の幼児を悼むこの作品は、その死が捏造されたとする報道を目にしたことから生まれました。現在進行中の残虐行為の無垢な犠牲者を追悼し、イスラエル国防軍の武装化に対するアメリカの加担を記録するため、米国製MK-84爆弾を、ノースカロライナ州の産院跡地から採取された土によって実寸で描き、その下に埋葬布に包まれた幼児の像が医療用テープで添えられました。マルタ・ビエンナーレにおいて未告知で展示され、検閲の時代における芸術の証言として、無辜の犠牲者の記憶を刻んでいます。

関連イベント
オープン記念レクチャー:メル・チン
日時 7月25日(土)14:00~16:00
登壇者 メル・チン
会場 広島市現代美術館 地下1階 ミュージアムスタジオ
定員 100名
※参加無料、通訳付
※10:00より1階受付にて整理券配布

学芸員によるギャラリートーク
日時 8月22日(土)、9月19日(土)15:00~16:00
会場 広島市現代美術館 B展示室
※要展覧会チケット、申込不要

アートナビ・ツアー(約30分の展示解説)
日時 毎週土・日・月・火 各日11:45~、14:45~
会場 広島市現代美術館 B展示室
※7月25日、7月26日、イベント開催時を除く

メル・チン(Mel Chin)
1951年11月21日生まれ、アメリカ合衆国テキサス州ヒューストン出身
1975年 ビーボディ・カレッジ(テネシー州ナッシュビル)卒業
現在 ノースカロライナ州エジプト・タウンシップ在住
主な受賞
1988年 国立芸術基金フェローシップ賞(アメリカ)受賞
2007年 ベドロ・シエナ賞アニメーション部門(チリ)受賞
2019年 マッカーサー・フェローシップ賞(アメリカ)受賞
2021年 アメリカ芸術文学アカデミー会員
主な個展
1989年 ハーシュホーン博物館と彫刻の庭(ワシントンDC)
1990年 ウォーカー・アート・センター(ミネソタ州ミネアポリス)
1991年 メニル・コレクション(テキサス州ヒューストン)
2006年 ステーション現代美術館(テキサス州ヒューストン)ほか
2014年 ニューオリンズ美術館(ルイジアナ州ニューオリンズ)ほか
2018年 クイーンズ美術館(ニューヨーク)
2022年 マディソン現代美術館(ウィスコンシン州マディソン)
主なプロジェクト
1991年~ Revival Field
1995~98年 In the Name of the Place
2006年~ Operation Paydirt
主な国際美術展
1994年 ハヴァナ・ビエンナーレ
1997年 光州ビエンナーレ
2001年 リヨン・ビエンナーレ
2024年 プロスペクト・ニューオリンズ

同時期開催の展示
コレクション展 2026-Ⅰ 6月27日(土)~9月23日(水・祝)
コレクション展 2026-Ⅱ 10月10日(土)~2027年1月24日(日)

作品点数 約60点(彫刻、ドローイング、絵画、アニメーション、インスタレーションなど)
本展は第12回ヒロシマ賞受賞記念展として開催されます。
主 催 広島市現代美術館、朝日新聞社
後 援 広島市教育委員会、中国放送、テレビ新広島、広島テレビ、広島ホームテレビ、広島エフエム放送、尾道エフエム放送

W'UP ★10月10日~1月24日 コレクション展2026-II「美術館の時間_チャプター2:時間の束」 広島市現代美術館(広島県広島市)

広島市現代美術館について
 広島市現代美術館は、全国で初めて現代美術に本格的に取り組む公立美術館として1989年5月3日にスタートしました。建物は、建築家·黒川紀章による設計で、市内を見渡す緑豊かな比治山公園に位置しています。自然の景観と調和しながら、美術館としての先駆性が表現されており、垂直軸に沿って下から順に自然石、タイル、アルミと変化する素材は、過去から未来への文明の発展や時間の流れを表し、設計者独自の「共生の思想」を体現しています。2023年3月18日、リニューアルオープン。

美術館外観
Photo: SATOH PHOTO Kazunari Satoh

※本記事は各施設配布のプレスリリースおよび提供情報をもとに作成しています。

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