W'UP! ★2月15日 ~4月12日 井上有一「実さいへたでくさっています 筆のせいかとも思うんですが。」 KOTARO NUKAGA(天王洲)(品川区東品川)

井上有一「実さいへたでくさっています 筆のせいかとも思うんですが。」
会 場 KOTARO NUKAGA(天王洲)(東京都品川区東品川1-32-8 TERRADA Art Complex II 1F)
開催日 2025年2月15日(土) ~4月12日(土)
開廊時間 11:00~18:00 (火〜土)
休廊日 日、月、祝日
入場料 無料
ホームページ https://kotaronukaga.com/
アクセス 東京臨海高速鉄道りんかい線「天王洲アイル駅」から徒歩約8分、東京モノレール羽田空港線「天王洲アイル駅」から徒歩約10分、京急本線「新馬場駅」から徒歩約8分
KOTARO NUKAGA(天王洲)では、井上 有一(1916 –1985)の展覧会「実さいへたでくさっています 筆のせいかとも思うんですが。」を開催します。
本展では万人に開かれた書を説き、門下をもたない有一が通信教授をした際にお手本として送った臨書やそのやりとりの手紙を初公開するとともに、有一の書業の中心をなす一字書11点を展示します。さらには、東京大空襲にて作家自身が受けた強烈な体験から生まれた《噫横川国民学校》を特別展示します。
- 井上有一,孝,1961年,framed
- 井上有一,夢,1966年,framed
- 井上有一,花,1967年,framed
- 井上有一,噫横川国民学校,1978年,framed
書が伝える身体と生命の輝き / 向井晃子
思わず笑みが溢れるような、なんともユーモラスな本展のタイトル「実さいへたでくさっています 筆のせいかとも思うんですが。」。いわゆる「お習字教室」に通った経験があると、身に覚えがある思いかもしれない。しかし、この言葉の主が破天荒な一文字書で知られる井上有一だと知ると、ちょっと意外に思われるだろうか。この言葉は有一が、現在よく知られる作風を打ち立てる以前の1952年に、請われて臨書(りんしょ)を書いて送った際の手紙文にある。当時、有一はどのように活動していたのだろうか。
ちょうどその年、有一は師の下から独立して仲間たちと墨人会を結成し、当時は美術家の長谷川三郎と密な交流もしていた。技術の巧拙を問わない長谷川の美的価値の主張とも響き合い、当時から、有一は整った文字を書くことを目指してはいなかった。例えば、レゾネにアメリカでの「抽象日本書」展(1954年)への出品が記載されている有一の《童詩ゆうがた》(CR53009)(1953年)は、多くの文字を紙面に収めているスタイルだが、その作品にも拙さが感じられる魅力はあり、本展で展示される通信の書きぶりとも通じるものがある。整った文字を目指していないなら、有一の言う「下手」とはなんだったのだろうか。
私たちは、整った文字を「上手」と認識する教育を受けている。というのも、日本の義務教育では、言語を学ぶ国語科で毛筆の書写が扱われ、整った文字を書くことによって、成績評価がなされるシステムになっているからだ。日本で教育を受けた者の多くは、それを書と受け止めている。しかし本来、書には言語を超えた要素も含まれている。例えば、筆運びの抑揚やリズム感、紙面への文字の配置の自由度などがそれに当たる。活字にすると失われる書き手の「息遣い」のようなものが、かつては文字と共にあったのだ。
書の古典を学ぶ臨書にも、その要素がある。臨書の受け止め方は学習者によって様々にあろうが、単に優れた古典の形真似ることに留まらず、その筆運びの緩急、抑揚、リズム感、それを可能にする体の使い方を学ぶことで、その書き手の精神状態にまで迫ることが、臨書の要素にあると言って良いだろう。臨書とは、時空を越えて、その古典の書き手の心身の状態に迫り、そこに満ちる生命感を探究する行為なのかもしれない。
拙さが魅力の有一の作風は、臨書と結びつきにくいかもしれないが、実際、有一は臨書を尊重しており、臨書において、その古典を見たときの自らの感動と古典が重なることが重要だと述べている。それを踏まえて本展のタイトルを顧みると、有一は、臨書においても感動や生命感を表現することを目指し、それが果たされていないことを「下手」と言ったようにも感じられる。
このような有一の思いは、若き日の戦争体験によるところもあろう。有一は学校教員をしており、1945年の東京大空襲を経験して、仮死状態から一命を取り留めている。本展では、この体験を書いた《噫横川国民学校》が特別展示される。焼け野原となり、昨日まで元気にしていた人たちが「黒焼」「白骨死体」「生焼女人全裸腹裂胎児露出」になる惨状。生きるか死ぬかを潜り抜け、生き残ったけれどもその惨状を目の当たりにし、生きることの尊さと稀有さ、生き残ることの辛さ、など、様々な生への思いが、有一に刻まれたはずだ。この作品は1978年に制作されたが、作品の激しさは、若き日の体験が有一の中で風化せずに残り続けていることを思わせる。
手書きが日常生活から離れて久しく、手書きから活字、活字からWebへと移り変わる中で、文字から身体的な要素が抜け落ちていった。そして、現代の一般的な生活でも、身体を使う機会はますます減少している。そのような中、有一の作品は身体と生命の輝きを私たちに伝え、薄れゆく身体感覚を呼び覚まそうとしているかのようである。
神戸大学国際文化学研究推進インスティテュート協力研究員
現代アートギャラリー「KOTARO NUKAGA(天王洲)」が、国内最大級の新スペースに拡張移転。

KOTARO NUKAGAは、「KOTARO NUKAGA(天王洲)」を2024年6月末にTERRADA ART COMPLEX Iの3階からTERRADA ART COMPLEX IIの1階に拡張移転します。
新たなスペースは、2024年6月末オープンを予定しており、国内最大規模となる、約386平方米の広さと5.5mの天井高を誇り、入り口近くの小ギャラリーと奥に広がる回遊性の高い「ロの字型」のスペースから構成され、様々な表現に対応します。
また、TERRADA ART COMPLEX Iの3階にある「KOTARO NUKAGA(天王洲)」は「KOTARO NUKAGA Three(コタロウ ヌカガ スリー)」に改称し、展覧会に加えて所属アーティストの作品を常設展示するビューイングルームの運営や、現在アートの研究を担うラボの設立等、様々な企画を通じて、"鑑賞者を中心に、現代アートの在り方、考え方、楽しみ方を拡張する空間"として、更なる発展を続けます。
W'UP ★6月20日~8月9日 José Parlá 『Home Away from Home』 KOTARO NUKAGA(六本木)(港区六本木)
W'UP★ 7月20︎日〜9︎月7︎日 井上七海「魚は水を知らない」 KOTARO NUKAGA Three(品川区東品川)
住所 | 東京都品川区東品川1-33-10 TERRADA Art Complex 3F |
TEL | 03-6433-1247 |
WEB | https://www.kotaronukaga.com/ |
営業時間*1 | 11:00 〜 18:00 |
休み*2 | 日、月、祝 |
ジャンル*3 | 現代美術 |
アクセス*4 | 天王洲アイル駅より徒歩8分、新馬場駅より徒歩7分 |
取扱作家 | https://www.kotaronukaga.com/artists/ |
*1 展覧会・イベント最終日は早く終了する場合あり *2 このほかに年末年始・臨時休業あり *3 現代美術は、彫刻、インスタレーション、ミクストメディア作品、オブジェなども含まれます *4 表示時間はあくまでも目安です 【注】ギャラリーは入場無料ですが、イベントにより料金がかかる場合があります |
KOTARO NUKAGA(六本木)
KOTARO NUKAGA(品川区東品川)
■コロナ感染拡大防止のための注意事項
展覧会オープンにあたり、KOTARO NUKAGAでは、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、下記のお願いと対応を行なっております。
皆様のご理解・ご協力をお願い申し上げます。
【ご来廊の際のお願い】
必ずマスクの着用をお願いいたします。 また、以下の症状をお感じの方は、ご来廊をお控えください。
・風邪の症状がある
・37.5度以上の熱がある
・倦怠感(強いだるさ)、息苦しさ等がある
ギャラリー側では下記対応を行います。
・手指消毒液の設置
・ドアノブ、エレベーターボタン等の随時消毒
・ギャラリー内の換気
・混雑時の入場制限
・スタッフのマスク着用、手指消毒、フィジカル・ディスタンシング(1.5m以上)の徹底
コメント