W'UP!★4月1日〜4月23日 Shawanda Corbett SOLO EXHIBITION “Down the road” SAI(渋谷 MIYASHITA PARK)

2023年4月1日(土)〜4月23日(日)
Shawanda Corbett SOLO EXHIBITION “Down the road”
このたびSAIでは、アメリカ出身アーティストShawanda Corbett(シャワンダ・コーベット)の個展「Down the road」を開催いたします。アメリカ出身で現在はロンドンを拠点に活動している彼女は、陶器、絵画、写真、映像、音楽からパフォーマンスまで多様なメディアを横断することによって複合的に創作活動を展開し、これまでに無いイメージを導き出しながら、記憶、経験といった考えや身体と空間との相互作用について探究しています。
これまで2021年にTateのターナー・バーサリーとクラインワート・ハンブロス・エマージング・アーティスト賞を受賞。2022年にはテート・ブリテンや、Salon94(現 LGDR)で個展を開催するなど、西洋のアートシーンにおいて今まさに躍進し続ける気鋭のアーティストとして注目されています。
コーベットの制作におけるアカデミックな側面は、ドナ・J・ハラウェイ氏の代表的なエッセイ「サイボーグ宣言」(1985年)にそのルーツを見出します。同文は、〈人間〉と〈動物〉、〈人間〉と〈機械〉の間に構築された境界を否定し、現代の技術社会の発展によって、我々は本質的に〈サイボーグ〉であると強調します。コーベットは、有色人種の女性としての自身の視点を用いて、この理論を現実という枠に組み込むことで、完全な身体とは何か、また動物、人間、機械の並存はどのような新しい解釈(ハイブリッド性)をもたらすのか問いかけます。
サイボーグ理論は、表現活動を行う上で間違いなく役に立ちました。サイボーグやロボットについて考える時、異なった部品で構成されながら、互いにはまり合い動き出すことを不思議に感じることがあります。私は色々なメディアで表現をする中で、動きのある表現に重きをおきます。それは、「動き」こそが私の活動のコンセプトだからです。つまり、私の作品というものは私の取り組 む物語やコンセプトに最適なメディアを探し出すことなのです。
同理論に対するコーベットの視点は、2022 年にロンドンのテート·ブリテンで開催された個展「Let the sunshine in」で上映された初の映像作品『Cyborg theory: the adequacy of tenderness to our antipathy』の基礎となりました。同作は、オスカー・シュレンマーの『Triadisches Ballet』から構想を得たダンスシーンを軸に、8幕から成るミュージカル作品です。作中では身体の動きに作用する建築物を身につけたパフォーマー達が、アフリカ系アメリカ人としての体験を探索する姿が窺えます。また、本作はコーベットの活動を理解するための入口となるものであり、本展中でも上映され、コーベットの世界観を体感 する大きな役割を果たすでしょう。

You didn't see me hugged up with no one (From: "The Women Of Skip Avenue"), 2022, 60.5 x 18 x 18 cm, Glazed Stoneware
本展覧会タイトル「down the road(ダウン・ザ・ロード)」とは、コーベットが育った南ミシシッピでよく耳にした言葉であり、アフリカ系アメリカ人の老人らが交わしていたミシシッピ訛りの会話の追憶から由来しました。それは特定のものを意図しない曖昧な方向性を示す言葉であり、そのニュアンスはコーベットの育ったコミュニティを凝縮するかのように表現します。本展を構成する、映像から陶器と絵画まで合計41点の豪華な作品群の多くは、ミシシッピでの記憶や体験から生まれており、また、作品を彩る色と線のフォルムは、記憶に残る人物の個性や、関わり合いによって呼び起こされた感情、あるいは制作中に聴くジャズの影響によって、コーベット自身の中にある物語を象徴的に描き出します。
そんな《あなたには新しい人がいる、だから私は泣いている(スキップ · アベニューのとある女性)》、《私は自分で歩いて帰れる(スキップ · アベニューのある女性)》といった陶器に付けられた各タイトルは、彼女の作品の登場人物を知るための窓口になり、文脈、背景、歴史に違いがあるにもかかわらず、観る者にコーベットの記憶に内在する物語の情景を連想させてくれます。

「Skip Avenue(スキップ・アベニュー)」は、さまざまな人々に出会える場所です。近所ではないのですが、かつて私自身が住んでいたエリアにある通り (道)になります。作品はそこで出会った人々を表現しており、私が彼らをどのように覚えているか、彼らの性格や彼らの周りにいることでどのように感じ たかを表現しています。これは純粋な感覚です。彼らがどのように見えるか、どのような服を着ていたのかを想像しているわけではありません。それよりも、彼らとの思い出が大切なのです。例えれば、それぞれの器は一貫して同じではなく、似て非なるものである。それについては、よりその時の状況が物語ってくれます。これら作品での登場人物は女性の割合が多くても、男性も特定のタイプを表しています。私の作品は女性らしさ、男性らしさ、子供らしさ、そしてそれら全ての既成概念の比喩とは違ったかたちで表現しているのです。

このように、コーベットの作品に内在するユーモア溢れる温かさは、これまで関わってきた人物に対するコーベット自身の愛情を示すものであり、彼女にとって、どこでもある感覚と繋がりに対する欲求は、作品の根底を形成しているのではないでしょうか。コーベットの記憶や体験は極めて個人的なものでありますが、それらを様々な感情に落とし込むことで、体験への共感を促し、アーティストと鑑賞者の垣根を越え、展示空間にいる私たちをそっと包み込んでくれるでしょう。

Shawanda Corbett シャワンダ・コーベット
シャワンダ・コーベット(1989年生)は、ロンドンを拠点に陶芸、絵画、写真、映像、パフォーマンスなど多様なメディアを複合的に横断しながら学際的な創作活動を展開するアーティストです。ニューヨーク生まれのコーベットは、その人生の大半をミシシッピ州で過ごし、豊かで複雑な歴史を内在するアメリカ南部州の文脈と記憶は、彼女に深い印象を与えました。ロチェスター工科大学を卒業後、オックスフォード大学ラスキン美術学校へ進学。現在まで博士課程を学んでいます。
これまでの主な個展に、テート・ブリテン(ロンドン)の「Art Now: Shawanda Corbett」 (2022)、サロン 94(ニューヨーク)(現 LGDR)での「To The Fields of Lilac」(2022)、コルヴィ・モラ(ロンドン)での「Neighbourhood Garden」(2020)などがあります。また、
フランクフルト近代美術やロンドンのTheCourtauldInstituteofArt、リンツのSchlossmuseumなど様々なギャラリーや美術館でのグループ展に参加し、パフォーマンスでは、ナウ・ギャラリー(ロンドン)で『breathe』、オックスフォード大学での『haarwese』、DeptfordX(ロンドン)での『EvocationofBuked』、サーペインタインギャラリー(ロンドン)での『BlackbirdinMississippi』などがあります。
2021年にはテートのターナー・バーサリーを、2021年にクラインワート・ハンブロス・エマージング・アーティスト賞を受賞。彼女の作品はTheFitzwilliamMuseum、TheHarris、イギリスのTheArtsCouncilCollectionのコレクションにも選ばれています。
ShawandaCorbettSOLOEXHIBITION“Downtheroad”
会 期 2023年4月1日(土)〜4月23日(日)
場 所 SAI(東京都渋谷区神宮前6-20-10 RAYARDMIYASHITAPARKSouth3F)
時 間 11:00〜20:00(無休)
電 話 03-6712-5706
メール info@saiart.jp
Instagram @sai_miyashita
イベント情報
トークショー
本展開催に合わせ来日するアーティスト自らが作品や表現について語ります。
登 壇 Shawanda Corbett
日 程 2023年4月1日(土)18:00〜
場 所 SAI(東京都渋谷区神宮前 6-20-10 RAYARD MIYASHITA PARK South 3F)
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