W'UP★6月27日~7月11日 齋藤大 個展「描く~Life Goes On~」 GALLERY A8T(仙台市若林区)

齋藤大 個展「描く~Life Goes On~」
会 期 2026年6月27日(土)~2026年7月11日(土)
会 場 GALLERY A8T(宮城県仙台市若林区卸町2-5-7)
開館時間 12:00~19:00(最終受付18:00)
休館日 7月4日(土)、7月5日(日)
入館料 無料
ホームページ https://www.gallerya8t.com/
介護職と画家の二足のわらじで制作を続ける齋藤大が問い続ける「生きること」。
介護の現場で人の生と死に向き合いながら、帰宅するとキャンバスに向かう。そんな生活を送る画家がいる。齋藤大(さいとう・だい)、25歳。油絵の具の独特な匂いが漂う部屋で、自分が美しいと感じた日常のイメージを、静かに画面へと定着させていく。今春、大学院を修了し、社会に出た今は、アーティストと介護職の二足のわらじで「生きること」をテーマに絵を描き続けている。描く楽しさとの出会いや美大時代、制作テーマについてなど話を伺った。
「描く」ではなく「作る」感覚。絵画との出会い
子どものころから描くことが好きで、物心ついたころにはもう手を動かしていた。ゲームのキャラクターや動物、昆虫、恐竜などを模写し、自分で対象物の説明を書き加えたノートを手製の図鑑に仕立てたり、ペーパークラフトや段ボール工作で昆虫や恐竜を作ったりもしていて……。今思えば、アートという意識ではなく、対象物を観察し「再現すること」への興味がすでにあったのだと思う。
高校で初めて油彩の技法に触れたとき、「これだ」と思った。乾きが遅いのが特徴だが、自分にはそれが魅力的で。納得いくまで何度でも動かせる、まるで粘土をこねているような感覚があった。正直、水彩のような繊細な表現は不得手だが、油彩の大胆さが自分には合っているように感じた。「描く」というより「作る」に近い感覚だろうか。その手応えは、すぐに結果として返ってきた。自分が心地良いと感じる技法を見つけ出した結果、宮城県の仙南高等学校美術展と宮城県高等学校美術展で受賞し、それが大きな自信につながった。



自分の表現を模索した美大時代
大学入学から3年間、試行錯誤し、たどり着いたのは「今あるものを大切にする」という逆説的な答えである。一度は手放した得意な表現にあらためて向き合い、最終的に卒業制作では、幼少期から続けてきた「模写」や「風景を描く」という原点に戻っていった。学部時代はある意味、遠回りの時間だった。でも今、振り返るとその過程を通して、自分自身を知ることができたと思っている。そして、担当教授が話してくれた「美術史において完全に新しいものは存在せず、過去を再解釈しながら発展してきた」という言葉は、今も私の軸として生きている。
卒業制作が転換点になった。大学院に進んだのも、卒業制作で見えた可能性を、もっと深く掘り下げたかったからである。風景画に向かい合い、自分の方向性が一気に広がった感覚があった。
大学院での修了制作のテーマは「生きること」だった。現代社会にいると、生きている実感がどんどん希薄になっていく気がする。制作では、その実感を取り戻すことを自分に課していた。山奥でキャンプをしながら自然に身を置く経験を通して、「生きること」は自然から切り離されたものではなく、その循環の中にあるんだという感覚が強くなっていった。修了展では、それを作品として表現しようと取り組んだ。
修了展を終えたとき、達成感はあった。でも正直、それ以上に「終わってしまった」という寂しさのほうが強かった。自分よがりな考えだが、僕にとって作品は、完成した後よりも、描いている時間そのものが一番輝いている気がする。なので、完成したら、もうそこには戻れない気持ちが寂しさとなって湧き出てくるのかもしれない。
絵画制作は“自然にはじまり、自然に終わる”
1日目に下書きと構図を決めて、2日目に画面全体を油絵の具で埋めて、3日目に細部を調整して完成させる。描き始める前に完成までの流れをある程度計画するので、制作中に迷うことは少なく、純粋に楽しいなと思いながら描いている。完成の基準は「これ以上筆を入れると画面がうるさくなる」という感覚を大事にしている。最後は描いたり消したりを繰り返しながら、慎重にバランスを整えていく。制作するにあたり、ルーティンみたいなものは特になく、生活の延長線上にただ“ある”という感じである。自然にはじまって、自然に終わっていくもの。
介護職を通じて深化した制作テーマ「生きること」
ホームでは、元気な方から認知症の方、看取りの段階にある方まで、さまざまな方々と日々関わっている。人の生や死をこれほど身近に感じる環境にいると、「生きること」に対する意識が以前よりずっと重みを持つようになった。制作のテーマは「生きること」だが、今はそれが以前より静かで、深みのあるものに変化している気がする。
今後の制作について、死というのは、当事者にとっては非常に重いものでありながら、他者にとっては驚くほどあっけなく過ぎ去っていく。その不思議な感覚を、絵画としてどう表現できるかを考えている。
自分の絵が、人の生活の中でどんな存在であってほしいかというと、生活の一部のような存在になってほしい。大きく主張するのではなくて、ふと目に入ったときに「良い絵だな」とだけ感じてもらえたら、それで十分である。自分にとって「描くこと」は生活の一部で、人の垢のようなものだと思っている。とても個人的な行為ではあるが、自分が美しいと感じた色彩や光、形といった日常の断片を、誰かと共有できれば嬉しい。
齋藤大がキャンバスに表現するささやかな生活のきらめきは、誰かの日常の片隅に重なり、生きていることへの手ざわりを思い出させてくれる。彼の絵もそれを見ている私たちも大きな自然に包まれているのだ。

齋藤大(さいとう だい) Saito Dai
2001年 宮城県白石市生まれ
東北芸術工科大学美術科洋画コースを卒業後、同校修士過程に進む
2026年3月 東北芸術工科大学大学院芸術文化専攻絵画研究領域修了
主な受賞歴は、2024年「Idemitsu Art Award 2024」入選、2024年「FACE展 2025」グランプリ受賞
「生きること」をテーマに、“人物が融合する風景”を描いている
2026年6月27日に地元宮城での個展「描く ~Life Goes On~」をGALLERY A8T(仙台)にて開催
シルクスクリーンの自社工場を備える仙台市のデザインファクトリー・株式会社AZOTH(アゾット)が運営するアートギャラリー・GALLERY A8T(ギャラリーエイト)。現代アートの作品をメインに独自の視点でキュレーションした企画展を開催している。




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