W'UP★9月21日~12月24日 リキッドスケープ 東南アジアの今を見る アーツ前橋(群馬県前橋市)
リキッドスケープ 東南アジアの今を見る
会 場 アーツ前橋(群馬県前橋市千代田町 5-1-16)
開催日 2024年9月21日(土)~12月24日(火)
開館時間 10:00~18:00入場は17:30まで)
休館日 水曜日
入館料 一般1,000円、学生·65歳以上·団体(10名以上)800円、高校生以下無料
※「群馬県民の日」(10月28日)、「文化の日」(11月3日)、「世界人権デー」(12月10日)は入場無料
ホームページ https://www.artsmaebashi.jp/?p=20571
今日の東南アジアでは、急速な経済発展と都市開発が進み、変化するライフスタイルの中 で多様な生活が営まれています。一方で、過去の歴史や風景、土地に根差した信仰、自然との関係も社会の底流には存在しています。それらは時に融合し、時には対立しながら急速に変化し、今の時代の新たな現実、生活のスタイル、世界観を生み出し続けています。
本展は、このように流動する東南アジア地域の文化、社会の状況を「リキッドスケープ(流動する風景)」と名付け、12組の作家による展覧会で紹介します。今回の参加作家は1980年代以降に生まれた7組の作家を含む若い世代で構成されています。彼らは、東西冷戦の終焉や、インターネット、iPhone、SNS を始めとするテクノロジーの登場、さらには世界の枠組みの大きな変化やアジアの台頭など、グローバルな事件を体験してきました。
また、女性作家4組は、女性の身体や社会的位置づけを再考することで、既存の価値観に新たな視点を付け加えようとしています。彼ら·彼女らはこうした体験を経て「多様性と流動性」に満ちた東南アジアの姿を捉えています。
作品に共通して見られるのは、流動する風景の中で、「どこから来てどこへ向かうのか」という問いに答えようとする作家たちの眼差しと試みです。本展の作品を通して、私たちは東南アジアの多面的世界の一端を知るだけでなく、世界のいたる所に存在する現代社会
の矛盾や混沌、新たな希望や可能性に向き合う態度に出会うことができるでしょう。
本展の見どころ
① 12組の作家が捉える、東南アジアの「今」に出会う
ホー·ツーニェンやコラクリット·アルナーノンチャイなど、世界的に活躍する作家に加え、日本初紹介の若手作家を迎えた全12組·23作品がアーツ前橋に集結します。東南アジアの社会、生活、文化の「今」を新しい視点で捉え、現在の規範的価値観を覆そうと試みる表現にご注目ください。
② 多様性·流動性が増す「現代を生きる態度」を学ぶ
東南アジアは、多様な文化や歴史が交錯し、常に変化を続けるダイナミックな社会です。その複雑な地域をみることは、多様性と流動性が増す「現代」を理解することに繋がります。
本展は、近年日本で開催された東南アジア展よりもさらに若い世代のアーティストと、彼ら·彼女らの新作を中心に構成しています。急速に発展する社会に生きる新しい世代の作品から「現代社会を生きる手がかり」を探ります。
③ 映像とサウンドによる没入体験で「流動世界」のイメージに潜る
多数の映像やサウンドを用いた没入型作品を介して「リキッドスケープ=流動する風景」の中へ皆さまをご案内します。絶えず形を変え、予測不可能な物事が次々に起こる「現代」に、感覚を開放して作品に飛び込んで、今を生きる新たな視点を見つけてみてください。
出展作家 ※参加作家数 12組 作品数 22点
ウィット・ピムカンチャナポン Wit Pimkanchanapong(タイ)
タイ・チュラロンコン大学建築学部卒業。現代技術を用いて、建築と彫刻を融合させた作品を制作している。芸術的な探求の他に、彼は熱心なサイクリストであり、長距離パドラーでもある。2014年に長距離サイクリング・ネットワークを設立し、車や列車を使わずにタイ全土の農村地域を巡る旅を実施する。この経験によって得た、前近代の風景、社会、文化と現代のタイの風景に関する視点は、近年の芸術活動に影響を与えている。
カウィータ·ヴァタナジャンクール Kawita Vatanajyankur(タイ)
女性性、労働、消費主義の交錯について問いを投げかけ、それらに挑戦するために自身の身体を用いたパフォーマンス・ビデオを制作している。家財道具や機械工具といった反復的で過酷な作業を引き受けることで、彼女は人間と機械をハイブリッドしたサイボーグの役割を演じている。その映像は、商業広告に類似する一方で、直視することが困難であるほど過酷であり、人間の能力と女性の回復力を示している。
カディム・アリ + ムムターズ・カーン・チョパン + アリ・フロギー + ハッサン・アティ
カディム・アリ(パキスタン)
1978年パキスタン生まれ。現在はオーストラリア・シドニーとアフガニスタン·カブールを拠点に活動する。ラホールの国立芸術大学で古典細密画を、テヘランで壁画とカリグラフィーを学ぶ。彼が出自を持つ民族の差別や迫害や、他の少数民族の歴史を辿る作品を制作している。
ムムターズ・カーン・チョパン(アフガニスタン)
1990年アフガニスタン生まれ。2013年に戦争と差別によって祖国アフガニスタンからの脱出を余儀なくされて、それ以来、インドネシア·ジョグジャカルタを拠点に活動を行う。彼の作品は、移住、不確実性、仮想生活に関する深い個人的体験と集団的記憶から生まれている。
アリ・フロギー(アフガニスタン)
1995年アフガニスタン生まれ。ハザラ出身の独学写真家、映像作家。過去 10 年間、難民としてインドネシアに住み、インドネシアの難民の日常生活を紹介している。
ハッサン・アティ(アフガニスタン)
1995年アフガニスタン生まれ。独学で写真を学んだハザラ人写真家。過去8年間、難民としてインドネシアのリアウ州ペカンバルに暮らし、インドネシアの難民の日常生活を紹介している。
コラクリット・アルナーノンチャイ Korakrit Arunanondchai(タイ)
1986年生まれ。ニューヨークとバンコクを拠点に活動するビジュアルアーティスト、映像作家、ストーリーテラー。アジアとアメリカでの多彩な活動を通して、文化移植やその混成性に埋め込まれた物語を伝えている。その作品群は、フィクションと詩を融合させ、さまざまな題材に関わる共感覚的体験を提供しており、主に家族、友人、同僚の生活や土 地の神話などを主題とした作品を制作している。
チトラ・サスミタ Citra Sasmita(インドネシア)
バリ島出身の現代アーティスト。バリ島の芸術や文化にまつわる神話や誤解を解き明かすことに重点を置いた作品制作を行う。芸術的活動を通して、社会的ヒエラルキーにおける女性の立場に疑問を投げかけ、ジェンダーの規範的な構成概念を覆すことに取り組んでいる。
チャールズ・リム Charles Lim (シンガポール)
1973年生まれ。オリンピックなどに出場するセーリングの選手として活動したリムは、水や海洋に関する深い知識や経験を背景に、映像、インスタレーション、サウンド、録音された会話、テキスト、ドローイング、写真など多岐にわたる作品を制作している。本展出展作品は、作家が2005年より発表している《SEA STATE》シリーズの一つで、「海」というレンズを介してシンガポールの社会や政治状況、生態系や環境に対して多角的に言及している。
ナウィン・ヌートン Nawin Nuthong(タイ)
幅広い媒体を通して歴史と文化メディアの繋がりを探求するタイ人現代アーティスト、キュレーター。神話や伝説を、ビデオゲーム、コミック、映画などから引用したポップカルチャーと融合させることで、歴史の理解と学びの再構成についてテクノロジーが果たすべき役割を検証している。モンクット王工科大学ラートクラバン校で映画学とデジタルメディアを専攻。
ナターシャ・トンテイ Natasha Tontey(インドネシア)
ジョグジャカルタとジャカルタを拠点に活動し、主にフィクションを用いて「造られた恐怖」にまつわる歴史や神話を考察し、それらを物語として伝える作品を制作している。既存の制度の視点からではなく、追放された存在や、ささやかで個人的な闘いに注目し、今とは異なる未来の可能性を探求している。
ホー・ツーニェン Ho Tzu Nyen(シンガポール)
1976年シンガポール生まれ。美術史から演劇、映画、音楽、哲学に至るまで、東洋と西洋の文化的側面を参照する作品は、神話的な物語と歴史的事実を融合させ、歴史、その記述、伝達に関する多様な理解を促す。彼の作品の中心的テーマは、東南アジアにおける文化的アイデンティティの多様性とそれに関する長期的な調査である。アーカイブ映像やアニメーションを組み合わせ、しばしば没入的で演劇的なインスタレーションを展開している。
メッチ・チョーレイ + メッチ・スレイラス Mech Choulay + Mech Sereyrath(カンボジア)
姉妹でも活動するカンボジア出身のアーティスト。姉チョーレイは映像作家、ジャーナリストであり、環境及び動物保護にまつわる作品制作を行っている。妹スレイラスは、新進のビジュアルストーリーテラーであり、短編映画《The Expired》が2023年の釜山国際映画祭(BIFF)で上映された。
ゲゲルボヨ Gegerboyo(インドネシア)
2017年に5人のアーティストによって結成されたジョグジャカルタを拠点にするコレクティブ。現在はエンカ·コマリヤ(Enka Komariah)、プリィハモコ・モキ(Prihatmoko Moki)、アンジャリ・ナイエンギッタ(Anjali Nayenggita)の3名で活動を行う。現代の都市文化、ストリートアート、政治、社会、伝統文化から多くのインスピレーションを得て作品を制作している。コレクティブ名は、ジャワ島のムラピ山に実在し、周辺地域を噴火や熱雲から守る丘の名前に由来。ゲゲルが背中、ボヨがワニのことで、ゲゲルボヨは「ワニの背中」を意味している。
ジャッガイ・シリブート Jakkai Siributr(タイ)
織物や刺繍を用いた作品を中心に制作するほか、観客参加型のインスタレーションも手掛けるアーティスト。タイでは言及されない非公式の歴史や、個人的かつ地域的な歴史の交差、さらに近年はマイノリティに対する民族主義的差別が 引き起こす紛争に関心を寄せている。そのような主題と、繊細な形態と素材の表現を対比させることで、現在進行中の微妙な緊張関係を浮かび上がらせている。
関連プログラム
南條史生特別館長によるギャラリートーク
日時 2024年9月29日(日)、12月21日(土)14:00~15:00
会場 アーツ前橋ギャラリー内
料金 無料*要鑑賞チケット
定員 30名
申込方法 8/26[月]以降に当館ホームページよりお申込みください。
担当キュレーターによる作品解説
日時 2024年10月14日(月·祝)、11月17日(日)、12月7日(土)14:00~15:00
会場 アーツ前橋アーカイヴ
料金 無料 *要鑑賞チケット
申込方法 当館ホームページよりお申込みください
ディレクター 南條史生(アーツ前橋特別館長)
担当キュレーター 高橋由佳
主 催 アーツ前橋
協 力 シンガポール美術館、アウラ現代藝術振興財団、100 Tonson Foundation
後 援 上毛新聞社、群馬テレビ、FM GUNMA、まえばし CITY エフエム、前橋商工会議所
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